短眠はアンチエイジング、記憶力、美容の大敵 十分な睡眠を
短眠が短命をつくる?
睡眠時間を少なくすれば、いろんなことができると考える方多くないですか?
今はとても忙しい時代ですから、そう考える方も多いでしょう。
睡眠時間が短くて済む人達のことを、ショートスリーパーと呼びます。
このショートスリーパーというのは、睡眠時間が短くても平気な人のことです。
短い睡眠時間でも、日中、睡眠不足でつらいと感じることがない、健康にもメンタルにもなんら支障をきたすことがない人。
医師であった日野原 重明先生は、ショートスリーパーだったそうです。
日野原先生は、100歳まで毎日約4、5時間の睡眠でありながら、毎日18時間働いて
週1日は徹夜という短眠生活を何十年も続けられたそうです。
まさにショートスリーパーですね。
しかしながら、多くの人は、そういう因子、つまり遺伝子をもっていません。
平均的な睡眠時間の統計では、どんなかたちでデータをとっても、正規分布(データ分布が平均値を頂点として左右対称の山型を描くようになること)になります。
その平均値はお おむね6時間から8時間の間になります。
つまり、その平均値にほぼ全員が入ってしまうというわけです。
因子をもたない人が無理をして睡眠時間を短くしても、睡眠負債がたまってパフォーマンスが下がる、疾患リスクも高くなり健康被害が生じる、精神的にもイライラが募ったりするなど、いいことはありません。
どうしても睡眠が短くなった次の日を思い出すと、それが実感できるのではないでしょうか?
私など、睡眠時間が短くなると、あくびが連発して、本を読もうとしても、1ページで意識がなくなってしまいます。
そんな状態ですから、仕事や勉強など全く頭に入りません。
「いや、自分は努力でショートスリーパーになれた」という人もいるでしょう。
しかし、そういう人はたまたま短時間睡眠の因子を潜在的にもっていた、と考えるのが正しいようです。
ショウジョウバエを使った実験で、「ランダム・ミュータジェネシス」といって、特定の薬品を使って無作為に遺伝子に変異を起こすと、いわゆる活動期が非常に長くて、休息期が非常に短いものが出てきます。
そして、この休息期が非常に短い変異種のほとんどが、寿命が短いのです。
ショウジョウバエの場合、一般的な「覚醒と睡眠」という定義にあてはめられないので、これをそのまま人間の睡眠時間の長短に置き換えて言及することはできませんが、関連性がある可能性は高いと考えられています。
睡眠時間を減らして自分の稼働率を上げることができたら、一生でどれだけ時間を有効に使えるようになるかと考えると、ショートスリーパーの人をうらやむ気持ちもわかります。
しかし、その結果、命を削ることになってしまったら元も子もありません。
ショートスリーパーになろうとして、努力するよりも、いかに時間を有効に使うかということを考える方が、むしろ効率的です。
命を削ってまでショートスリーパーになろうとしても、集中力はそがれ、いつも眠く、作業効率が落ちる、というのであれば、努力をする意味がありませんから。
ですから、自分も努力すればショートスリーパーになれるというような幻想は、むやみに抱かないほうがいいのです。
ロングスリーパーの有名人
ちなみに、相対性理論で有名なアインシュタイン博士は、10時間以上のロングスリーパーだったといわれています。
ショートスリーパーだから偉業が成し遂げられるとは限らない、という好例でしょう。
またスポーツ選手では、ロングスリーパーの方がたくさんいます。
テニスのロジャー・フェデラー、ヴィーナス・ウィリアムズ、マリア・シャラポワ、そして "人類最速の男”ウサイン・ボルトらが10時間以上眠る、ロングスリーパーで知られています。
眠ることでシナプスも整理される
かなり昔ですが、受験では「四当五落」などと言われたことがありました。
睡眠時間4時間で頑張って勉強する人は受かり、5時間も寝てしまうと落ちるという意味です。
睡眠を削って勉強した者が結果を出せるという、昔の精神論の典型のようなフレーズでした。
しかし、それが根拠のない俗説であったことは、さまざまな実験や統計によってすでに実証されています。
夕方に学習して知識を習得したり、身体で覚える技能を学んだりした後、睡眠をとるグループと、睡眠をとらずにそのまま起きているグループとに分けて、翌日に記憶の定着度を見る実験をすると、睡眠をとったほうが確実によく覚えているという報告がなされています。
特に身体で覚える技能に関する記憶は、睡眠をとることでよりしっかり定着、強化されます。
スポーツ選手にロングスリーパーが多いのは、日々のトレーニングによって得た技術を定着させるために睡眠が必要なために、多くの一流のアスリートは睡眠時間が長いのかもしれませんね。
もちろん、しっかりと眠ることで、身体の回復をしているということもあると思います。
日々のトレーニングでは身体の内部にダメージを与えることになりますので、それを回復させるためには、十分な睡眠をとり、身体の修復に必要な成長ホルモンをしっかりと分泌させる必要があります。
これらの事実から考えて、たとえ一夜漬けをするにしても、徹夜をするのではなく、覚えてからできるかぎり眠ることが大事です。
明日は期末試験だから、一夜漬けして勉強しようという場合も、徹夜して試験を迎えるのではなく、少しでも寝ることが重要です。
さらに近年、睡眠時に記憶が整理されていることもわかってきました。
レム睡眠中、学習時に増加したシナプスの樹状突起が形成されるのですが、レム睡眠によって「刈り込み」もされて、数が減ることが明らかになりました。
つまり、細胞間のつながりは整理されることで強化されているのです。
寝ると覚えたことを忘れてしまうのではなか、と考えて試験の前は寝ないで一夜漬けした方が良いと考える人もいるかもしれませんが、研究結果がその逆を示しています。
ですから、学習計画というものも、睡眠を確保した後に立てるということが大切です。
これは、勉強している学生だけに当てはまることではありませんよ。
明日は重要なプレゼンがあるから、徹夜で資料を作り上げようというようなことはやめなければならないということです。
プレゼンの内容が全く頭に入っていない可能性がありますし、作った資料も十分なものができていない可能性もあります。
ですから、どんな状況でも少しは睡眠をとるように意識することが大切ですね。
まとめ
ショートスリーパーになろうとして、訓練することはやめましょう。
無駄な努力になる可能性大です。
それよりも、睡眠時間はしっかりと確保して、それから時間を効果的に使えるようにスケジュールを考える方が、よほど現実的です。
睡眠不足はお肌の敵と言われますが、その理由は睡眠時間には成長ホルモンを分泌させて、お肌の修復もしているからです。
ですから、睡眠不足はお肌の敵というのはその通り。
ショートスリーパーになろうとして、作業効率を落とし、美容や若さを失うという最悪の状況を生み出しては元も子もありません。
それよりも、睡眠時間をしっかりと確保して、作業効率を上げ、アンチエイジングや美容の効果もしっかりと感じながら過ごすというほうが、結果としてよほど効率的ということになるでしょう。
時間が足りないという場合は、自分がどのような時間の使い方をしているのか、すべて記録してみるということも一つの方法です。
1週間程度記録してみて、自分の時間の使い方を把握してみれば、意外と無駄にしている時間が見つかるものです。
その時間をいかに有効に活用するか、ということが睡眠時間を削るよりも重要なことではないでしょうか?