糖質ダイエット、脂質制限食、地中海食、取り組むべきダイエット法はどれ?
半年で5kg痩せるとしたら、どのダイエット法?
ダイエットについては、本当にたくさんの方法がありますね。
毎日、何かのダイエット法が発表されている気がします。
もうネタなんてないんじゃないかと思いますが、どんどん新しい方法が生み出されますね。
もしも、半年で5kg痩せなければならないとしたら、そんなたくさんあるダイエット法の中から選ぶことができるのでしょうか?
今、日本で流行っているダイエットは、大きく2つに分類することができると思います。
1つは、脂肪の摂取制限をメインに置いた低脂肪食(菜食)。
もう1つが、糖質を減らす糖質制限食(低炭水化物食)です。
この2つのうちから選ぶことが、最も妥当だと思えます。
この2つのダイエット法では、どちらがやせられるのか、そこが問題になりますよね。
科学的な根拠がないかと探してみると、2つの食事法を比較した貴重な研究がイスラエルにあるようです。
この研究では、低脂肪食と糖質制限食に加えて、地中海沿岸の伝統的な家庭料理である地中海食も比較研究の対象となっています。
それぞれの食事法
そこでまず、それぞれの食事がどんなものなのかを知る必要があります。
低脂肪食(菜食)
- 脂肪の少ない穀物中心の食事を摂る。
- 全粒粉パンや麦飯、五穀米などをなるべく摂る。
- 野菜や果物、豆類なども多く摂取する。
- 1日の摂取エネルギー量の上限女性は1500kcal、男性は1800kcal
- 1日の摂取栄養素の上限脂肪は総摂取エネルギーの30%未満、飽和脂肪酸は9%以下、コレステロールは300mg以下
- 脂肪を含む食品やケーキ、菓子類、油を使ったスナックなどを控える
糖質制限食(低炭水化物食)
- たんぱく質や脂肪の摂取制限はないため、おかずはかなりの量が食べられる。
- しかし、ご飯などの主食は食べられない。
- 1日の摂取エネルギー量 制限なし
- 1日の炭水化物の摂取量 最初の2カ月は20g、その後徐々に増やして120gまで増量する。
- 1日のたんぱく質の摂取量 制限なし
- 1日の脂肪の摂取量 制限なし
地中海食
- 地中海食ではオリーブオイル、ナッツ類、野菜、果物をふんだんに使うのが特徴。
- 家族で食卓を囲んで楽しみながら食べる。
- 運動もする。
- たんぱく源は主に魚と鶏肉で、赤身肉、すなわち牛肉、羊肉などはあまり食べない。 豆類も多く摂る。
- 1日の摂取エネルギー量の上限 女性は1500kcal、男性は1800kcal
- 1日の脂肪の摂取量摂取エネルギーの35%未満
- オリーブオイルを30~40g、ナッツを5~7個(20g)摂る
以上の説明から、それぞれの食事についておおよそのイメージができたのではないでしょうか。
では、半年で5kg痩せるという目標達成のため、あなたはどのダイエットを選びますか?
- 低脂肪食(菜食)
- 構質制限食(低炭水化物食)
- 地中海食
太る原因は食べ物の脂肪か、運動不足か
肥満の原因について、長らく脂肪の過剰な摂取が主な要因とされてきました。
そのため、これまでは食事の脂肪分を制限するダイエットが主流でした。
いわゆる低脂肪食によるダイエットです。
脂肪が脂だということから、このダイエットは考えられているのでしょう。
ところが、こうした従来の説に疑念を呈する見方も出てきています。
ハーバード大学公衆衛生学部栄養学のウィレット教授は、脂肪の摂取が肥満の主因ではないと主張しています。
ウィレット教授は各国の脂肪摂取量と、BMI(体格指数)との関係を調べ、単純に脂肪摂取量とBMIを結びつけるのは間違いだと主張しました。
脂肪の摂取量の増加が、そのまま肥満に結びつくのではないというのです。
その証拠の1つとして、アメリカでは脂肪摂取量も、全体のエネルギー摂取量も、 ここ5年間で減少しつつあるにもかかわらず、肥満人口は爆発的に増えているという 「アメリカン・パラドックス」をあげています。
脂肪が肥満の主因であって、しかも脂肪の摂取量が減っているのならば、肥満人口が増えるはずがないというわけです。
一方、従来の脂肪説を支持する立場から、デンマーク王立獣医農業大学のアストループ博士がこのウィレット教授の説に反論しています。
アストループ博士らは、低脂肪ダイエットを行ったの研究のメタ分析(複数の研究結果を統合し、より高い見地から分析すること)を行い、脂肪を摂っている群に比べて、低脂肪ダイエット群のほうが2.5kgの体重減少があり、それは脂肪摂取の減少量に対応しているとしています。
アストループ博士は、アメリカン・パラドックス の原因は単なる運動不足としています。
このような2つの立場に対応しているのが、低脂肪食(菜食)と糖質制限食(低炭水化物食)です。
低脂肪食は肥満の主な原因を脂肪と考え、脂肪の量を減らすことをめざします。
一方、糖質制限食では肥満の主な原因を、糖質を多量に摂取することによる血糖値の急上昇に求めます。
そして、血糖値を上昇させる糖質を減らすことによって、ダイエット効果を上げようとするものです。
低脂肪食では、減らした脂肪分のエネルギーを何で補うのでしょうか?
それは炭水化物の摂取量を増やすことで補います。
これに対して糖質制限食では、炭水化物の摂取を制限した分のエネルギーを、脂肪の摂取量を増やして補います。
つまり、一定量のエネルギーを摂取するとした場合には、糖質制限食は必然的に高脂肪食になり、低脂肪食では必然的に高糖質食になるのです。
このように低脂肪食と糖質制限食は好対照をなしています。
それでは、ダイエットに真に効果的なのはどちらのダイエット法なのでしょうか?
半年後は糖質制限食が良いかもしれない
ここで2008年、医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』 に掲載されたイスラエルの研究を見てみることにしましょう。
この研究では、低脂肪食と糖質制限食、地中海食の3つの食事グループで、それらの料理がもたらす減量の効果を調査し、その結果が報告されています。
過体重から肥満の範疇に入る322人を対象に、無作為に3種類のダイエット法に振り分け、その選ばれたダイエットを継続してもらいながら、体重の変化を観察しました。
結果はどうだったのでしょうか?
ダイエットを開始してから半年では、糖質制限食でいちばん減量効果が大きく、7kg近くやせています。
低脂肪食と地中海食も半年で5kgのダイエット効果でした。
ところが、この半年後をピークに糖質制限食と低脂肪食の減量効果は薄らいでいくことが報告されています。
最終的に、2年後の減量効果は、低脂肪食群が2.9kg減、糖質制限食群が4.7kg減、地中海食群が4.4kg減という結果でした。
この2年間では、糖質制限食と地中海食のほうがダイエット効果が高いという結果になりますね。
この研究はその後も引き続いて追跡調査が行われ、6年後のデータも判明しています。
その結果、低脂肪食群が0.6kg減、糖質制限食群が1.7kg減、地中海食群が3.1kg減でした。
6年後には、低脂肪食はほとんど元の体重に戻っています。
糖質制減食では、6年たっても多少の減量効果は残ってはいるものの、1・7kgの減量効果しか残っていません。
別の見方をすると、2年経過の時点と比べて、低脂肪食では2.3kg、糖質制限食では3・0kgのリバウンドが起こっていることになります。
これに対して、地中海食は時間経過してもさほど体重は戻っておらず、最終的に3倍以上の減量効果を残しました。
3種類のダイエット法の中の低脂肪食にはいくつかのマイナス面があります。
低脂肪食の4つのマイナス面
- 長期的に見ると減量効果がほとんどない。
- 血液中の中性脂肪が増えて善玉コレステロール(HDLコレステロール)が減る。
- 心筋梗塞などの冠動脈疾患や脳卒中、それらによる死亡を予防していない。
- 大腸ガンを予防しない。乳ガンの発症および再発を予防しない。
このように、低脂肪食は実行するのに大変な割には、いいことがありません。
さらに、低脂肪食と糖質制限食とにランダムに振り分けて減量効果を6カ月間で比較したところ、糖質制限食のほうが明らかに勝っていました。
- 糖質制限食 5.8kg減
- 低脂肪食1.9kg減
低脂肪食と糖質制限食は、ともにダイエット開始半年後にはリバウンドが起こり始めます。
しかし、最初の半年間のダイエット効果については、低脂肪食よりも糖質制限食のほうが高いということができるでしょう。
糖質制限食は、リバウンドも激しい
糖質制限食のダイエットが注目されるようになったのは、その手軽さも理由の1つなのではないでしょうか?
日本人ならば基本的には、ご飯やパンの摂取を控えるだけで、面倒なエネルギー計算もありません。
糖質を控えればよいというだけですので、何を食べてもよいというのは、我慢の必要がないダイエットとしても取り組みやすいのでしょう。
糖質制限食のダイエットは、考案者のロバート・アトキンス博士の名前を取った「アトキンス・ダイエット」の名称で、アメリカを中心に新しいダイエット法として流行り始めました。
糖質制限食は開始6カ月以内での減量効果は明確ですが、その一方で、イスラエルの研究でもはっきり傾向が現れていたように、リバウンドも激しいのです。
そのため、 1年を過ぎると体重が急速に元に戻ります。
低脂肪食と糖質制限食の減量効果は、1年たった時点では変わらないという報告が ペンシルバニアの研究チームから報告されています。
アトキンス・ダイエットにおける体重減少の程度は、ダイエット期間、エネルギー制限の程度によるものであって、炭水化物の摂取量を減らしたこととは関係のないことが判明したというのです。
どういうことかというと、糖質制限食では、脂肪やたんぱく質を十分摂ることによって逆に食欲が低下します。
またタンパク質は腹持ちもいいので間食がなくなり、エネルギー量の制限を加えなくても、実行した人の1日の摂取エネルギー量は決して多くなかったのです。
しかし、数年後に体重が元に戻ってしまうのであれば、取り組む意味もないという結論に至っても仕方ありません。
2000年当時、アメリカで人気のあった4種類のダイエット法を比較した研究があります。
160人を無作為に4種類のダイエット法に振り分け、1年間にわたって観察するというものです。
その4種類とは以下のとおりです。
- アトキンス・ダイエット
炭水化物の摂取量をダイエット開始時は1日20gに抑え、毎日少しずつ増量し、50 gになった時点で増量をやめる。
- ゾーン
炭水化物・脂肪・たんぱく質の摂取エネルギー比率を40:30:30にする。
- ウエイト・ウォッチャー
日々の体重からエネルギー制限目標を設定する。
- オーニッシュ
基本的に菜食主義者と同じようなダイエットで、脂肪からのエネルギー摂取量を全体の10%以下に抑える。
この研究では、すべての参加者に1週間に最低60分の運動を行ってもらいました。
1年後の結果は以下のとおりです。
- アトキンス・ダイエット 2.1kg減
- ゾーン 3・2kg減
- ウエイト・ウォッチャー 3.0kg減
- オーニッシュ 3.3kg減
この研究では、どの方法も減量できています。
しかし、実はどのダイエット法が優れているという話ではなく、結局は決められたダイエット・メニューをどれくらい守れたかが減量の鍵でした。
真面目にダイエットに取り組んだ人の結果が良かったということです。
その後、アトキンス・ダイエットが最も優れているという報告もありましたが、1年しか経過を見ておらず、「糖質制限食のダイエット(アトキンス・ダイエット)は、半年以内であれば最も減量効果が大きいが、その後、体重が元に戻る可能性もあるので注意が必要である」という結論でした。
アトキンス・ダイエットについては、長期間続けられないという点のほかにも、さまざまな問題点があると考えられています。
まとめ
ダイエットというのは、長期間続けることができることでなければ意味がありません。
極端なことを言ってしまえば、一生そのダイエット法を続けることができるか、ということが重要なポイントになってくるでしょう。
ここで、一生低脂肪食や、低糖質食を続けることができるでしょうか?
私たち日本人は、一生お米を制限するということに、耐えることができるでしょうか?
また、一生脂肪を含んだ食品を制限することができるでしょうか?
結論としては、半年間で5kg痩せなければならない、という場合には糖質制限食ダイエットを行うことになるのではないかと思います。
しかし、そこからリバウンドが始まることを考えると、地中海食ダイエットや、健康的な日本食を食べるということに転換するのが一番良いということに、研究結果から判断できます。