日本食が美容やアンチエイジングに良いのはなぜ?
日本人が長生きなのは、日本食のおかげ?
日本食は世界的に人気がある食事です。
それだけ優れている食事だということなのですが、何がそんなに優れているのでしょうか?
私は日本人であり、幼いころから親しんできた食習慣ですので、この状況はうれしく思います。
実は、日本食に関しての研究から十分なエビデンスこそ集まっていません。
しかしながら、日本食はさまざまな長所を備えた、優れた食事と考えられることがその原因です。
2015年5月に発表されたWHO(世界保健機関)の「世界保健統計2015」 によると、日本人の男女合わせた平均寿命は84歳で、194カ国中1位です。
年によって順位の小さな変動はあるにしても、現在の世界で日本人がとても長生きであることは間違いないところです。
この日本人の長寿傾向には、私たちが普段摂っている日本の家庭料理も貢献していると、たくさんの研究者が考えているのです。
ここでは日本食の特徴を、地中海食も含めた欧米の食事と比較しながら考えてみたいと思います。
地中海食についてはこちらをご覧ください
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1977年、アメリカで5000ページにも及ぶ健康問題に関する調査報告が議会に提出されました。
当時のアメリカは、国民1人あたりの医療費が、先進国中トップクラスであるにもかかわらず、生活習慣病で亡くなる人が増え続けていました。
アメリカ政府は総力をあげて、この健康問題の解明を試みたのです。
上院に特別委員会が設置され、徹底的な調査が行われました。
委員長のジョージ・マクガバン議員の名前を取って、この調査報告は「マクガバン・レポート」と呼ばれています。
マクガバン・レポートでは、当時アメリカ人の死亡原因上位10位のうち半数の病気が食事と密接に関わっているとしています。
1位心臓病
2位のガン
3位の脳血管疾患
7位の糖尿病
10位の動脈硬化
異常の5つの病気が、食事と密接に関連していると報告しています。
アメリカ人が摂っている肉食中心の食事が生活習慣病を作り出しており、それらの病気は薬では治らないとして「高エネルギー・高脂肪の食品、つまり肉・乳製品・卵 といった動物性食品を減らし、できるだけ精製しない穀物や野菜・果物を多く摂るように」と勧告しました。
そして、「世界で1カ所だけ理想的な食生活の国がある。それは日本で、彼らの食習慣を見習うべきである」と紹介しているのです。
最も理想的な食事と定義して、伝統的な日本の食事であることが明記されています。
以来、「日本型食生活」が栄養バランスのとれた食事として、世界で注目されるようになりました。
「日本型食生活」で評価されているのはたくさんの理由があります。
その1つが三大栄養素のバランスの良さです。
日本食の場合、三大栄養素の標準的なバランスは、炭水化物(糖質)が55~60%、たんぱく質が15~20%、脂質が20~25%です。
栄養学的には、炭水化物とたんぱく質、脂質の割合は、3 :1:1がよいとされています。
アメリカのフードガイドや2005年に厚生労働省・農林水産省が公表した「食事バランスガイド」もほぼ同じ比率になっており、日本食はまさにこれにぴったり合った比率なのです。
また、日本食のメリットとして、素材を生かした料理であることもあげられます。
寿司などが典型ですが、寿司にかぎらず、日本食では素材そのものの味をなるべく楽しもうとします。
調理する際も、素材の味を生かすことを主眼に置いています。
こうした日本食の特徴は、素材に手を加え、原材料を作り変えていく西欧型の発想の料理とは違ったものです。
地中海食との比較でいえば、日本食と地中海食には共通するところがあると、しば しばいわれてきました。
- 牛や豚などの赤身肉の摂取が少なめであるため、動脈硬化のリスクを高める飽和脂肪酸の摂取が比較的少ない点。
- 魚介類を多く摂取するため、血液をサラサ ラにする青魚のドコサへキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)が 多い点。
- 穀類や豆類などを多く摂るため、食物繊維や微量元素が多い点
これらが日本食と地中海食に共通する長所として認識されているポイントです。
日本食に足りないものは?
健康によいとされる日本食にも、いくつかの短所があります。
最も大きな問題は、食事の塩分量が多くなりがちであることが指摘されます。
特に高血圧の人 などは、意識して減塩に努めることが必要です。
また、「マクガバン・レポート」で称賛された伝統的な日本食ですが、現代の日本人がどこまで維持できているのでしょうか?
日本では食の欧米化が急速に進み、私たちはかつてほど野菜や魚を食べなくなりました。
代わりに飽和脂肪酸を多く含む肉や加工肉の摂取量がかなり増大しつつあります。
加えて、現代の忙しい日々では外食が多くなり、冷凍食品やコンビニ弁当などの摂取量も増え、栄養も偏りがちになってきています。
沖縄県民の寿命の長さはしばらくのあいだは日本一でしたが、戦後世代が人口の中心になるにつれ、その順位を確実に落としています。
おそらくアメリカ軍が駐留し、コンビーフなどの西洋食が一気に入ってきたからでしょう。
西洋食は手軽に食べられるものが多いため、伝統的な沖縄料理を常に食べるという人が減ってきているようです。
ほかの都道府県でも同様の傾向はあるわけですから、日本がいつまで世界一の長寿国の座を保てるかはわかりません。
こういう時代だからこそ、できるだけ意識的に昔ながらの日本食を摂る必要があるでしょう。
飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を含んだ食品や加工品を控え、減塩に心がけることのほかに、配慮したいポイントを3つあげておきましょう。
日本食を摂る際の3つのポイント
- 食物繊維を多く摂る。
- サラダ油をやめ、オリーブオイルを使う。
- 食事を楽しみながらゆっくり食べる。
国民栄養調査と国民健康・栄養調査によれば、日本人の食物繊維の摂取量は、1947年に比べると2008年の段階で約半分まで減っています。
食物繊維が持っているさまざまな効能については、近年研究が進んでいます。
たとえば、リンゴの皮に含まれる食物繊維であるペクチンは、コレステロールを消化管内で吸着したり、血糖値の急上昇を抑えたりする働きがあります。
チェルノブイリ原発事故の際には、体内に取り込まれた放射性物質を早く排せつさせる働きがあるという報告もありました。
「日本人の食事摂取基準」(2010年版)では、食物繊維の目標値は、18歳以上で1日あたり男性19g以上、女性17g以上とされています。
しかし現在、その目標値をクリアするほど食物繊維を摂っているのは、60~69歳世代の女性だけです。
ほかの世代はすべて食物繊維の摂取が不足していると報告されて います(平成20年国民健康・栄養調査結果概要より)。
こうした状況ですから、私たちはできるだけ食物繊維を、多く摂ることを心がける必要があるでしょう。
食物繊維をとることで、アンチエイジングに大敵である血糖スパイクも防ぐことができるのですから、アンチエイジングの効果を高めるためには、ぜひとも目標値を超えるようにしたいものです。
第2に、地中海食から学ぶべき点も多いはずです。
特にお勧めなのがオリーブオイ ルです。
日本食と地中海食との違いの1つは、地中海食がオリーブオイルを多用するのに対して、日本食はサラダ油を多用するという点です。
オリーブオイルが含むオレイン酸は酸化されにくく、善玉コレステロール値を上げたり、動脈硬化や心疾患を予防したりする働きがあります。
一方、サラダ油に含まれることが多いリノール酸は、過剰に摂取すると体内の酸化を進め、悪玉コレステロールを増やすばかりではなく、善玉コレステロールをも減らしてしまうことがわかっています。
また、リノール酸の過剰摂取による体内の酸化が、 アレルギーを引き起こす原因の1つではないかという指摘もあります。
地中海食では、脂質が占めるパーセンテージは30~40%とやや多めですが、その脂質の70%を占めるのがオリーブオイルなのです。
これだけ多くの脂質を摂っているにもかかわらず、地中海食を食べる人たちに心臓や血管などの病気が少ないのは、オリーブオイルの影響とされています。
最近では、日本人もずいぶんオリーブオイルになじんできました。
しかし、地中海沿岸の人たちほど、オリーブオイルが日々の食の中にしっかりと組み込まれていないのも事実です。
サラダ油に比べると、オリーブオイルは高額なものもあります。
しかし、オリーブ オイルのすばらしい健康効果を考え合わせれば、毎日の食事の中でできるだけ活用してほしいものです。
ドレッシングに使うだけではなく、炒め物などにも使えますし、パンを食べるときにバターやマーガリンの代わりに使ってもいいでしょう。
特にマーガリンは、極力避けなければならない油です。
マーガリンはトランス脂肪酸の塊ともいえる油ですので、絶対に使わないという意識でいなければならないものです。
日常生活では、お菓子や加工品に使われている可能性がありますので、すべてを防ぐのは難しいため、自分が何かを作るときには、使わないという習慣にすることで、使用を減らすことができます。
また、地中海食がすばらしいのは食事の味だけではありません。
家族と一緒に食卓を囲み、食事と会話を楽しみながら、ゆっくり時間を過ごすのも、地中海食の特徴です。
語り合いながら食べることで、血糖値の急上昇が抑えられるという利点もあります。
なにごとにも慌ただしい日本社会では、これを実現するのは難しいかもしれませんが、たとえば週末だけでも、家族とゆっくり食事をしてはいかがでしょうか。
まとめ
日本食は優れた食事であることは、日本人としてうれしいことですが、最近はファーストフードや、コンビニが増えているため、日本食を食べている日本人はかなり少ないのではないでしょうか?
アンチエイジングに詳しい人は、日本食の優れた特徴を知っているため、海外の人でも積極的に取り入れているようです。
日本人の私たちは、海外の人に比べると、容易に日本食を食べられるという状況にあるわけですから、アンチエイジングのため、そして美容のために、ぜひ日本食を食べる機会を増やしていきたいものですね。