運動がストレスホルモンを減らす。海馬をストレスから守る!
運動の利点
運動をするということは、アンチエイジングや美容の基本ですし、健康促進に関してもこれまた基本になることです。
運動でもたらされる有益な効果というのは、数えきれないほどあって、運動しないと損といえるほどです。
抗酸化作用があったり、血行が良くなることで免疫力アップが期待できたりと、様々な効果が運動によりもたらされます。
ストレスに対処するために
私たちは様々なストレスにさらされて毎日を過ごしているということには、誰も依存がないでしょう。
仕事、勉強、子育てなどストレスを感じるものを上げなさいと言われたら、誰もがすらすらとストレスを感じるものを列挙することができるはずです。
ストレスは私たちが日常生活を送る上では、とても重要なものであり必要不可欠なものです。
しかしながら問題は、必要ないのに長期にわたってストレスにさらされるような場合です。
ドキドキする理由
ストレスを感じた場合、心臓の鼓動が速くなりドキドキしているのを感じることがあるでしょう。
これは、危険な状態になったときに、鼓動を上げていつでも逃げ出せるように準備するためですので正常な反応ということができます。
この心臓がドキドキすることを司るのが、HPA軸(視床下部・下垂体・副腎軸)と呼ばれるシステムです。
ストレスを感じると、まず視床下部からホルモンが分泌され、それが下垂体を刺激します。
すると下垂体から別のホルモンが分泌され、副腎を刺激します。
そして、その副腎からストレスホルモンであるコルチゾールが分泌され、そのコルチゾールが心臓の鼓動を早くしているのです。
いろんなプロセスを経ているように感じると思いますが、このすべての反応は本当に一瞬で起こります。
1秒もかからないほどの早さで心臓がドキドキし始めますよね。
例えば、ヒグマやライオンに出会ったときに、とっさに反応するのにこの反応がゆっくりでは全く役に立たず、逃げることができません。
ですから、この反応は一瞬で起こるようにできています。
この反応によって、逃げたり何らかの反応を起こすために必要になる血液を、筋肉や脳に素早く届けるために、ドキドキと心臓がたくさんの血液を送り出すわけです。
扁桃体の働き
HPA軸のことを先ほどお話ししましたが、実はHPA軸の原動力となる部分があります。
それが脳の中の扁桃体という部分です。
側頭葉の奥深くにあるアーモンド形の部分で、2つあります。
この扁桃体がストレスを感じるような危機的な状況になったときに、警告をHPA軸に送ることで臨戦態勢を整えて、心臓の鼓動を早くすることになります。
そしてこの扁桃体は、ちょっと変わった働きがあるようで、ストレスで血中のコルチゾールが増えると、扁桃体はさらに興奮するようです。
まさにストレスがストレスを呼ぶという状態ですね。
ストレスがストレスを呼んで制御不能のような状態になった場合、本格的なパニック発作のような状態になってしまいます。
長期にわたるストレスが身体に悪いのは、パニック発作にまで至らなくても、ストレスがストレスを呼ぶ状態になることが一つの理由です。
海馬による抑制
このストレスがストレスを呼ぶという状況を防いでいるのが脳の中の海馬と呼ばれる部分です。
海馬といえば記憶の中枢と呼ばれるところですが、感情を暴走させないように働くブレーキのような役割もはたしています。
海馬がストレス反応を抑制することで、扁桃体の動きを相殺するような働きですね。
この関係は実はずっと続いていて、今こうしている間でも、両者は常にバランスをとって働いています。
長期の慢性的なストレスの問題点
慢性的なストレスが問題なのは、身体に様々な悪影響を与えるからですが、ここでは脳に与えるダメージについて見てみたいと思います。
先ほど、ストレスを感じた時は扁桃体が興奮するけれど、海馬がそれを抑制するということをお話ししました。
通常ストレスが去れば、血中のコルチゾールの濃度は下がっていくために、興奮はすぐに収まります。
しかし、慢性的にストレスを感じてしまうと、血中のコルチゾールの濃度が高いままになってしまいます。
そうなると影響を受けるのが海馬であると言われています。
海馬の細胞は過度のコルチゾールにさらされると、なんと死んでしまうのです。
つまり、慢性的にコルチゾールが高い状態が続いていると、海馬は萎縮してしまうことになります。
海馬の萎縮がもたらすもの
慢性的なストレスによって海馬が萎縮してしまうと、どのような弊害が起こってしまうのでしょうか?
まず、海馬は記憶を司る部分ですので、当然物覚えが悪くなってしまいます。
ストレスを感じて、ドキドキしているときに、記憶力が高くなるという方はほぼいないでしょう。
海馬が萎縮するとそのようなものが覚えられない状況が、ずっと続いてしまう可能性があるわけです。
記憶力というのは、勉強や試験を受けるときに必要なだけではなく、日常生活でもとても重要なものであることは説明する必要もないでしょう。
それが慢性的なストレスによって阻害されてしまったら、それはもう大変な状況ですよね。
また、海馬が萎縮することでストレスの制御ができなくなることで、さらにストレスが制御できないという、まさに最悪のスパイラル状態になってしまうことが予想できます。
実際に、ストレスを慢性的に感じている人の脳をMRIやCTスキャンなどで調べてみると、海馬が萎縮しているため、平均よりも小さくなっているということが報告されています。
慢性的なストレスに対処するには
慢性的なストレスは、自分がそれが良くない、健康に悪いから感じないようにしようと努力しても、減らすことが難しいところが難点ですよね。
そんな慢性的なストレスに効果的なのが、先ほどからお話ししている運動なのです。
なぜ運動がストレスの対処に効果的なのでしょうか?
それはコルチゾールの分泌に効果的な影響を与えるからだと言われています。
まず、運動、例えばランニングなどを行った場合、その運動自体は身体にストレスを与えるものですから、コルチゾールが増大します。
運動によって体中の筋肉や内臓に血液がたくさん必要ですから、心臓がしっかりと鼓動を速くして血液を送り出してくれないと困りますから、ストレス状態になるわけですね。
そして、運動が終わったときには、速やかにコルチゾールの濃度が下がります。
運動がストレスに効果的なのは、運動が終わった後に爽快感を感じるから、ということももちろん重要なことなのですが、加えて重要なことがあります。
それは、運動を習慣化することでコルチゾールの分泌を効果的に減らすことができるようになります。
つまり運動によってコルチゾールが増大する量が減っていき、さらに運動が終わった後に減るコルチゾールの量も増大するという、とてもありがたい状態になります。
そしてこの状態、運動したときだけの効果にとどまりません。
日常生活で感じるストレスに対して分泌されるコルチゾールの量も減っていくのです。
つまり運動によって、慢性的なストレスを軽減する効果があり、さらに海馬をコルチゾールから守ることができるために、記憶力の維持やさらには向上につながるということが報告されています。
海馬が守られることで、記憶力の維持はわかるけれど、なぜ記憶力が向上するのかというと、運動によって海馬の細胞が増える可能性があることが研究によって、これまた報告されているからです。
まとめ
私たちはストレスと無縁の生活を送ることはできないのが現状ですよね。
そうなると、いかにコルチゾールと付き合っていくか、ということがとても重要になってきます。
しかし、難しい方法が必要というわけではなく、30分程度の運動習慣がストレスから私たちの身体を守ってくれます。
ストレスから守ってくれる運動ですが、その効果はそれだけにとどまらないのが運動の素晴らしいところです。
運動の習慣がまだない場合は、今日から、エスカレーターを使わないで、階段の上り下りをすることから始めてみてはいかがでしょうか?