返報性の法則(原理)を少し詳しく調べてみました。
返報性の法則について
心理学では返報性の法則、返報性の原理というものがあります。
これは多くの方が知っているもので、簡単に言ってしまえば、何かをもらったらお返しをしないといけないな、という気持ちになって実際にお返しをするということです。
正直、この気持ちというのは人間としては当然の気持ちだと思います。
何かをしてもらったり、物をもらったりすると、お返しをしなければという気持ちがなければ、もらいっぱなし、のような状況になりますので普通の人であれば、少々不快感を持つと思います。
よほど鈍感な人なら別ですが、やはり普通の人ならその不快感は解決したいと思うものですよね。
そして、おそらく人間はこの返報性の法則があるから生き残ってきたのであろうと言われています。
狩猟などで生活している場合は、いろんな困難な場面があったであろうことはすぐに想像できると思いますが、その困難な状況をみんなで協力しあって生きていかなければ、ならなかったはずです。
みんなで協力するためには、やはりもらいっぱなし、与えっぱなしという状況は好ましくないわけで、全員で最大の力を発揮して厳しい自然環境を生きていかなければならない環境では、全員が与え合うことが重要ですよね。
ですから、この返報性の法則は、人類が生き残るためにもとても大切な感情というか、気持ちだったということです。
そして、お互いが得をするウィンウィンの状況を生み出すことができる返報性であれば、これほど望ましいことはないですね。
返報性の実例
返報性の法則が使われているのは、デパートなどの試食コーナーです。
どんな味かわかったほうが、購入しやすいということもあるのですが、やはりメインの目的になるのは返報性なのではないかと思います。
試食だけで済ますのは申し訳ないな、と多少なりとも誰もが思うはずです。
そして購入につながれば、試食の意味があるということになります。
その申し訳ない、という気持ちを起こさせるためにも、試食というのはあると考えるのが妥当でしょう。
そして、多くの方が意識していないかもしれませんが、返報性の法則が働いている場面があります。
頼み事をしているようなとき、例えば500万円貸してくれと言われて、それは無理を断ったとします。
そして、相手が「じゃあ1000円貸してくれ」と言われて、それならと貸した場合、返報性の法則が働いている可能性があります。
それは、最初のオファーを断っているということで、申し訳ないという気持ちがあり、次の要求は受けないといけない、という気持ちが働いている可能性があるのです。
最初のオファーは、あまりに現実味がない場合は、返報性の法則が働かないことが多いのですが、現実味あふれる場合はかなりの確率で返報性の法則が働くものです。
これを巧みにビジネスに使っているところもありますね。
スーツなどを買いに行くと、まずは値段が高くて質のよいものを進められ、それを断ると、少し値段を落としたものを進めてくるような場面ですね。
この返報性については注意が必要です。
この場合は、何も得るものがないにも関わらず、恩義を感じてしまうことになりますから、これを利用して巧みにだまそうとする人も出てくるからです。
返報性の法則について知ることができれば、詐欺のような場面でも適切な対応ができるようになると思いますので、より理解を深めておく必要がありそうですね。
返報性の分類
そんな返報性ですが、心理学的には細かく分類されているようです。
それをいくつか見てみたいと思います。
好意の返報性
好意の返報性とは、「相手から受けた好意を返したくなる」心理のことを言います。
好意というからと言って、恋愛だけに限定されるわけではなく、様々な好意に対するものです。
たとえば、「相手が親切だと、こちらも親切にしたくなる」「相手が褒めてくれると、こちらも相手を褒めたくなる」という心理も、好意の返報性ということになりますね。
「情けは人のためならず」ということわざがあります。
これは情けをかけると人は怠けるから、情けは人のためにならない、という解釈をしている方がまだいらっしゃるかもしれませんが、そういう意味ではないです。
情けをかけると、めぐりめぐって自分に返ってくるからどんどん情けをかけなさいという意味です。
好意の返報性から言うと、相手に好意を持ってほしいなら、まず自分が親切になり、相手が喜ぶようなことをしてあげなければならない、ということになりますね。
そうすることで、好意が返ってくる可能性が高まるというわけです。
恋愛においても、勇気がいることなのですが、自分から好意を示すということが大切かもしれませんね。
敵意の返報性
敵意の返報性とは、「向けられた敵意を返したくなる」という心理のことです。
先ほどの好意の返報性とは反対の心理ということになりますね。
相手から悪口を言われると言い返したくなってしまったり、横柄な態度をとられると同様の態度で応じたくなる、というのがこの敵意の返報性ということです。
返報性の法則は、何か良いことをしてもらったときに返したくなる、というものが有名かもしれませんが、この敵意の返報性のようにネガティブな側面も持ち合わせているところには注意が必要です。
悪いことをすると罰が当たる、ということを子供の頃に言われたことがあるかもしれませんが、相手に向けた敵意や悪意は、自分に跳ね返ってくる可能性があるということを覚えておく必要がありますね。
しかも返報性が働くことで、その確率はかなり高くなってしまいます。
譲歩の返報性
譲歩の返報性とは、「相手が譲ってくれたのだから、自分も譲ってあげよう」という心理になります。
たとえば、相手が「どうぞ」と席を譲ってくれたような場合を考えてみると、「いえいえ、あなたこそどうぞ」という気持ちになると思います。
これが譲歩の返報性と呼ばれます。
譲歩の返報性というのは、譲られたことに関する恩を感じたから返したいという心理のことですね。
自己開示の返報性
自己開示の返報性というのはちょっとわかりにくいかもしれませんね。
これは、相手がオープンな態度で接してくれると、自分も相手に心を開きやすくなる心理のことです。
初対面の人が、声をかけてくれて親しくあなたに接してくれたような場合を考えてみてください。
たとえ人見知りであっても、相手が心を開いてくれているから、あなたも心を開いて話すことができた、という経験がきっとあると思います。
こういうときって、明るく接してくれる方には本当にありがたいと感じる一方で、自分自身のこともオープンにしやすいものです。
まだ親しくない人と接するときは、誰でも失礼がないように、と萎縮してしてしまいますからね。
しかし、思い切ってふだんの自分をさらけ出してみることが大切なのかもしれません。
あなた自身を率直に語ることで、返報性の法則によって相手も心を開きやすくなるということがありますし、それによって心理的な距離が縮まりやすくなるからです。
まとめ
返報性については、人間の基本的な感情ではないかと思います。
誰かのために行うことは、きっとあなたのためにもなることですので、どんどんしてあげる、という気持ちでいるのが良いのではないでしょうか?
ただし、返報性の法則は強力ですので、悪用しようとする人、悪用とまではいかなくても、ビジネスに応用して高額商品などを売りつけようとする人がいますので、注意が必要になります。
必要もない高額な商品を買ってしまう、という方は返報性の法則で買わされていないか、確認する必要があるかもしれませんね。