遅読家のための読書術(印南敦史著)の感想
遅読家はどう読むべき?
以前から何度か読んだことのあるこの「遅読家のための読書術」ですが、改めて読んでみることにしました。
この本の特徴は、やはり著者である印南さん自身が遅読家であるということです。
なんと普通に読むと1ページ5分ぐらいかかることがあるそうです。
それは大げさなのかもしれませんが、遅読家であることは間違いなさそうです。
そんな遅読家である印南さんが、どのように本を読んでいくべきか、ということを記している本ですので、内容もかなり興味深そうですよね。
私自身、速読ができればよいな、と思っていろんなトレーニングをやってみたのですが、どうもうまくいかないため、速読は私にはできないのだと考えています。
ちなみに科学的な研究によると、速読できるかどうかは遺伝によって決まっている部分が大きいということで、トレーニングによって多少は読む速度が速くなるかもしれませんが、過度な期待はできないというのが正解のようです。
この本は速読法などについて書かれた本ではありませんので、トレーニングの必要もなく、今すぐにでも実践できるような内容になっています。
忘れることを前提として読む
私たちは、本を読むときにはできるだけすべての内容を覚えておきたい、一字一句残らず覚えてしまいたい、という気持ちが強いものです。
しかし、当然すべてを覚えておくことはできないために、自分自身に嫌気がさしてしまうということもあると思います。
さらにしっかりと覚えようとして、本を読むことで読むスピードも当然遅くなってしまうわけです。
この本の中では、
読書の本当の価値は、書かれていることの「100%を写しとる」ことではなく、価値を感じられるような「1%に出会うこと」にあります(33ページ)
として、すべてを覚えようとすることをあきらめて、本当に重要なことだけを記憶できるような読み方が進められています。
全て覚えようとして、全く覚えられない読書よりも、1%でも素晴らしいことを記憶できる読み方の方が良いのは当然ですよね。
フロー・リーディング
そこで著者は、新しい読書の概念としてフロー・リーディングの習慣を提唱しています。
ストック・リーディングが、フロー・リーディングの反対になるのですが、それは記憶しようとして、脳に情報をため込もう、ストックしようとして読む方法になります。
対してフロー・リーディングは本が、あなたの脳を流れていくような感覚で読むものです。
覚えようとしないで、流れに任せるように読んでいくことになると、あまり役に立つ読書法ではないのではないか、という印象を持つかもしれません。
しかし、フロー・リーディングのポイントは、覚えようとしないで読んでいくことで、忘れずに残っているものの中に、自分にとって大切な部分が凝縮されているという考え方です。
そう考えると、得られるものは、ストック・リーディングで読んで何も覚えられないよりも、フロー・リーディングで重要なものだけを記憶できる方が、よほど役に立つと言えると思います。
そして、フロー・リーディングの概念では、本の内容を頭にとどめようとするのではなく、ノートやメモなどで重要なところを書いていく方法を採用しています。
そのため、自分の外部に情報をため込んでいくスタイルです。
自分で書くということで、重要な部分をしっかりと確認することができますし、書くという行為も脳のいろんな部分を刺激しますので、記憶に残すという意味ではとても重要なことになります。
遅読家の特徴
遅読家がなぜ読むのが遅いのか、その原因を探れば速度が速くなり、フロー・リーディングが可能になります。
ではなぜ読むのが遅いのかというと、遅読家は読むスピードが遅いというよりも、読むスピードが常に一定であるというところにあります。
なぜかというと、全てが重要だと考えて丁寧に丁寧に一文字一文字読んでいくというスタイルですので、当然読むスピードは遅くなります。
しかし、フロー・リーディングは、重要な部分を探すような感覚で読んでいくため、読むスピードは一定ではなく、早い部分や遅い部分が出てきます。
さっと読んでいく中で、重要だと感じる部分、しっかりと読みたいと感じる部分があれば、そこでゆっくりと読むことになりますし、それ以外はさっと流し読みのような感覚で読んでいく部分もあります。
この緩急が読む速度を上げていくことになります。
どのようにその速度を変化させていくのかは、本の中に詳しく解説されていますので、一読されると、あなたの読書にとても良い影響を与えることになると思います。
本を楽しく読むために
しかし、結局のところ読書は楽しくなければ、速く読むこともできませんし、継続も出来ません。
本書では、本を楽しく読むためにいくつかのアドバイスが書かれています。
その中でも、重要だと私が思うのは以下の部分です。
本を気軽に開き、気軽に読みはじめられないのは、「その本を読むことによってなにを得たいか」がはっきり決まっていないからです。
(130ページ)
これは私もすごくよくわかります。
本を読むという場合に、その本から何か有益な情報を得られるということがわかっていれば、それを探すために本を読もうという気持ちになります。
その情報を求める欲求が強ければ強いほど、本を開きたいという気持ちになるはずです。
そして、少しでも時間ができればその本を開いて読む、ということが当然のようにできてしまいます。
それでは、探すべきものがわかっているということは、一体どういうことなのでしょうか?
私は、それは適切に質問が作れることだと思います。
本を読むときには、何も考えずに読み始めるという方がいます。
それでしっかりと本が読める、ということであれば全く問題ありませんが、その本から何かを得ようという意思がないままに本を読み始めると、やはりすぐに飽きてしまうと思います。
ですから、まずは目次や最初に著者が書いている解説のようなものを読んで、この本から何を得ることができるのか、ということを考えて質問を考えることが大切です。
そしてその質問の答えを探すようにして本を読むことで、自分が得たい情報を効率的に、そして素早く得ることができるようになります。
答えを探すための読書は、まるでゲームでもしているかのように楽しい時があります。
そんな気持ちがあれば、きっと気軽に本を開くこともできるようになると思いますよ。
本の選択
本を速く読みたいという場合は、フロー・リーディングがとても効果的なのですが、速く読んではいけない、読む必要はない本もありますよね。
例えば小説などは、じっくりとあらすじに沿って読んでいくべきで、重要なところだけを読むという方法は必要ありません。
ですから、速く読むべき本なのかどうなのか、という判断も重要になってきます。
とは言えこの選択はそれほど難しくもないものだと思いますので、深刻に考える必要もないですね。
まとめ
本を速く読めるということは、それだけでかなりの武器になると思います。
さっと読んでしまうべき本は、素早くフロー・リーディングで情報を吸収して、生活に活かしていければ、充実した生活を送ることができるのは簡単に想像できますよね。
このテクニックを身につければ、いろんな場面で活かすことができるものになると思います。
読むべき本がたまっている場合は、一度試してみるのも面白いですよ。