読書好きけんの雑記ブログ(ヘルシー志向強め)

日々思いついたことをシェアしたいと思っています。読書で得た知識も備忘録を兼ねて、わかりやすく感想をアップしようと考えています。

「岩井克人「欲望の貨幣論」を語る」(丸山俊一+NHK「欲望の資本主義」制作班著)の感想

貨幣について

 

貨幣というのは、私たちが毎日生活するうえで、いろんなものを買ったり売ったりするために必要なものです。

 

何も売っていない、という方も仕事をされていたりすると、自分の時間を売っていることになりますので、誰もが買うだけではなく売ってもいます。

 

買い物をするにはやはり通貨、貨幣があるほうが断然便利ですよね。

 

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例えば物々交換だと、自動車が欲しい人とバナナと交換するような場合を考えるとわかりやすいです。

 

自動車と交換するために、どれだけのバナナをもっていかなければならないのか、考えただけでも大変です。

 

その点、お金なら1000万円の自動車でも、1000枚の1万円札を持っていくのは、少し重いですが運ぶことは簡単です。

 

しかも、キャッシュで買う場合でも、おそらく振込で取引されますから、お金を持っていく必要もないのが実際の取引です。

 

あまり意識していませんが、通貨や貨幣があることで、私たちの生活はすごく便利になっているのですね。

 

仮想通貨って?

 

私たちの生活を便利にしている通貨、貨幣について調べる必要があると感じたのは、ビットコインをはじめとする仮想通貨の存在からです。

 

ビットコインなどの仮想通貨については、どうも理解しがたい部分があって、私は手を出すことはできないのですが、やはり知識として知ることはとても重要だと思います。

 

そもそも仮想通貨は、なぜ「仮想」の「通貨」という名前になっているのでしょうか?

 

いろんな疑問がわいてきましたが、その疑問を解決するために、この「岩井克人「欲望の貨幣論」を語る」を読んでみることにしました。

 

「仮想通貨」とは何か。簡単に言いますと、001101011100000010・・・というような文字の連なりです。数字の連なりを暗号にして ー 暗号にしないと盗まれるので ー そして数字そのものを貨幣として流通させる。500円玉の場合は金属のかけら、1万円札の場合は紙切れですけれども、紙切れや金属のかけらといったモノではなく、「数字」そのものを「貨幣」として流通させる試みです。モノとしての実体性を持っていないので「仮想通貨」と呼ばれるのです。

(26ページ)

 

なぜ仮想という文字が使われているのかがわかりましたね。

 

しかし、ここで新たな疑問が出てきてしまいます。

 

「500円玉や1万円札は、1度使うと売り主にそれが渡されるため、手元に残りません。ですから、時間をかけてまた手元に戻ってきた場合は使うことができますが、基本的に同じ貨幣をすぐに使うことはできません。しかし、数字だけの貨幣なら何度でも同じものを作って使うことができるのではないか?」

 

つまりは偽造することが驚くほど簡単にできるのではないか、ということです。

 

しかし、仮想通貨を作る際に、この問題に気が付かないはずがなく、当然対応がなされています。

 

ビットコインなどの仮想通貨には、この問題に対応するためにブロックチェーンという技術が使われています。

 

日本語では「分散台帳」と呼ばれるものです。

 

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ビットコインを例にしてブロックチェーンの技術を簡単に見てみると、どのビットコインの取引も暗号化されて、同じく暗号化された過去の取引とつなげて記録されています。

 

そしてその記録は市場参加者が共有します。

 

この市場参加者が、ビットコインの二重支払いではないかというチェックを行うのです。

 

新たにビットコインを使った取引が行われたときに、そのブロックチェーンが二重支払いでないかをチェックするためには、「ハッシュ問題」と呼ばれる膨大な計算問題を解かなければならないように工夫しています。取引があるごとに、ヨーイ・ドンで、多数のビットコイン使用者がコンピューターでこのハッシュ問題を解く競争をし始めるのです。そして、一番早く解いた人には、新たなビットコインをご褒美として与えることにしています。

(28ページ)

 

普通の貨幣は、偽札が作られないように、偽のコインが作られないように様々な工夫がされていますよね。

 

それらを防止するために、国家や中央銀行がいろんな工夫をしているわけです。

 

しかし、仮想通貨はニセ金作りを防止することからも、国家や中央銀行を排除している点で、かなり考えられたシステムだなという気がします。

 

ビットコインは貨幣になる?

 

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では、これほど高度に工夫されているシステムで運用されているビットコインですので、貨幣としても将来は使えるようになるのではないか、と思いますよね。

 

この点については、岩井さんの意見は、ビットコインは貨幣になる可能性を99%失ったと述べています。

 

その理由として、ビットコインが投機商品となってしまっていることを上げています。

 

これはどういうことなのでしょうか?

 

私たちが貨幣を使う時を考えてみましょう。

 

私たちが500円のコーヒーを買うとしたら、500円玉を使うか1000円札などを支払ってお釣りをもらいますよね。

 

その際に、この金属の丸い物は500円だということがわかっているから使えるわけです。

 

もちろん1000円札、10000円札も、それがその金額であるということが、誰もがわかっているから使えますね。

 

つまりは他の人が貨幣として受け取ってくれるのは、その価値が変わらないし、誰にとっても同じだからです。

 

しかし、ビットコインが投機対象となってしまっていることから、今では1ビットコインが数百万円になっているようですが、明日は数十万円、しあさっては千円になってしまっている可能性がありますよね。

 

そんなものを貨幣として使うことができるか、ということです。

 

上がることがわかっている場合は使いたくないし、下がることがわかっている場合は受け取りたくないはずです。

 

そうなると、貨幣として使うことはかなり難しいのではないか、というのが99%貨幣になる可能性を失ったという理由になります。

 

この説明を聞くと、確かに貨幣としては使えそうにないな、という気になります。

 

仮想通貨は何のためにあるのか?

 

ここまで見てくると、仮想通貨はいったい何のために存在するのか、という疑問がわいてきます。

 

投機商品になってしまっている現状は、私の目からはギャンブルにしか見えないというのが正直なところです。

 

仮想通貨に使われている技術であるブロックチェーンについては、様々なところでさらに使うことができると注目が集まっているのですが、仮想通貨については投機としての存在以外には見つからなさそうですね。

 

もちろん残りの1%がありますので、どうなるかはわかりませんが。

 

まとめ

 

仮想通貨について、それがどのような物なのかということを調べるために本書を読み始めました。

 

もちろん仮想通貨については、すごくわかりやすく解説されているため、仮想通貨について知りたいという場合は一読されることをお勧めします。

 

しかし、この本のタイトルの中にある言葉は「欲望の貨幣論」です。

 

仮想通貨はその中のごく小さな一部でしかありません。

 

貨幣がどのような歴史を経て今に至っているのか、そして私たち人間の欲望と合わさると、貨幣はどのように機能し経済に影響を与えていくのか、ということがわかりやすく解説されています。

 

経済学というと、高度な数学が使われていたりするため、あまり触れたくないという方も多いと思いますが、本書に関しては経済学の知識がなくても、それほど苦労することなく読み進めることができるように工夫されていると私は感じました。

 

貨幣について理解を深めるにはもってこいの本だと思います。