「天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々」(メイソン・カリー著)の感想
天才・偉人はどのように生活していたのか
天才たちの日課って気になりますよね。
いや気にならない、という方よりも気になるという方の方がきっと多いと思います。
私はとても気になります。
ということで、この本を読んでみたわけですが、このタイトルの中にある「クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々」というところがきになりました。
クリエイティブでない日々で、どうやってクリエイティブな活動を行うのか、という素朴な疑問ですね。
しかし、読み進めるうちにその意味が分かりました。
多くの天才、偉人の生活スタイルが紹介されているのですが、その生活ぶりがとても規則正しいのです。
天才というのは、やはりクリエイティブな方が多い印象がありますが、その日常はクリエイティブ感をほぼ感じないという、まさにタイトル通りという感じでした。
天才というと漠然としていて、いろんなタイプの天才がいるので、本書に取り上げられている人だけが天才ではもちろんありません。
ですから、日常生活も驚くほどクリエイティブ、という方もいるのだろうとは思うのですが、本書を読むとおそらくそれが少数派なのだろうなと感じました。
日々の生活をいかに大切にするか、ということは誰にとっても重要なのですが、それはどんな天才・偉人であっても同じことのようです。
生活のバリエーションから何を得るか
本書に紹介されている天才・偉人は100名以上になりますし、当然全く同じ生活を送っている人はいません。
100人いれば100パターンの生活があるので、そこから何を読み取るのか、ということが本書を読む目的となるでしょう。
それだけの数ですから当然中には、参考にならない生活様式というものがありますし、とても参考になると言いうものがありますが、私が天才たちの生活から感じることができたのは、規則正しい生活を送ることの重要性でした。
ここの私は少々意外だという感覚を持ってしまいます。
天才たちは仕事をすれば、なんでも自由に行うようなイメージがあるからです。
深夜まで酒を飲んでいたり、遊んでいるけれど、仕事になるとキリっとして結果を残すというようなイメージがあります。
しかし、そのような生活はクリエイティビティを阻害するのかもしれません。
スケジュールの管理
では天才たちは、自分のスケジュールというものをどう管理していたのでしょうか?
偉人たちは、最高の仕事をするために、毎日どう時間をやりくりしていたのか。創造性を高め、生産性を上げるために、どんなスケジュールを組んでいたのか、ということだ。
(12ページ)
やはり著者もそこが、最大の関心事だったようで、多くのページを使っていろんな偉人の時間の管理方法を紹介しています。
やはり印象に残るのは、偉人は自由に創作活動を行っていたのではなく、しっかりと自分を管理しながら創作活動を行っていたということです。
ドラマなどで、作家が〆切間近にホテルなどに缶詰めになって、ひたすら原稿を書き上げるというシーンがありますが、そのような状況は本当なのだろうか、という気持ちに変わってきました。
そのように追い詰められた状況で実力を発揮する、というタイプの方も多いのかもしれませんが、追い詰められなくても実力を発揮できる状況を探す、ということもこれまた重要な気がします。
W・H・オーデン
「その日のうちにやりたいこと、やらねばならないことを決め、それを毎日必ず決まった時間にやる。そうすれば欲望に惑わされることはない。」
(21ページ)
この部分に天才たちの生活がどのようなものなのか、しっかりとまとまっていると思います。
それはどういう意味かというと、毎日決まった時間に行うことの重要性が書かれていということです。
天才・偉人というとつねに創作活動を行っていて、生活は時間やスケジュールに縛られている印象は低いものです。
しかし、如何に規則正しい生活をするか、それが誘惑に惑わされない方法である、ということが書かれていて、ルーティーンの重要性を改めて確認しました。
そして、それがもたらすさらなる恩恵も天才たちは感じているようです。
「基本的に、なんでも規則正しくやれば、創作上の壁にぶちあたったり、ひどいスランプに陥ったりすることはないと思っている。」
(106ページ)
結果が出ない、パフォーマンスが上がらない、というような状況を避けるためには、やはり規則正しい生活が重要になるのですね。
「忘れるな。規則正しい生活習慣がついて初めて、人は真に興味深い活動分野に進むことができ、その結果、意図的な選択をひとつひとつ、まるで守銭奴のように蓄積していける。ー ひとつのわが抜けると、無数の輪がはずれてしまうことを、決して忘れるな。
(127ページ)
規則正しい生活をすることで、その恩恵を受けることができるわけですが、それは創作活動を行うためには避けることができないことのようです。
創作活動は、当然一日で終わるものではありませんので、日々の積み重ねがとても重要です。
それを行うことができるのは、規則正しい生活習慣があるから、ということですね。
仕事の大切さ
私たちは自分の仕事に不満を持っていることが多いものです。
もっと給料が高い仕事に転職したい、なぜあいつが出世して私ができないのか、など不満を上げればきりがないと思います。
天才・偉人は仕事についてどのように考えていたのでしょうか?
ウォレス・スティーヴンス
「ちゃんとした職についていることは、この世で私が経験したことの中で、もっともすばらしいことのひとつだと思う。ー そのおかげで生活に秩序や規律をもたらされる。自分の望む自由もあるし、もちろんお金の心配もまったくない。」
(175ページ)
仕事があるからこそ、規則正しい生活を送ることができる、お金の心配もないから創作に力を入れることができる。
仕事については、不満もありますが、やはりこのような積極的な意味もしっかりと認識しておくことで、規則正しい生活を送ることができるのですね。
時間の重要性
時間というのはとても重要であるということは言うまでもありません。
フリードリッヒ・シラー
「我々は貴重な財産 時間 を軽んじてきた。時間の使い方を工夫することによって、我々は自分をすばらしい存在に変えることができる」
(232ページ)
どんなに優れた結果、仕事をしてきた人でも時間の管理はとても大切であり、その時間を管理するためには、規則正しい生活を送ることであったようです。
まとめ
天才や偉人が意識してきたことは、優れた結果を残すことだったはずです。
「読者は僕がどんなライフスタイルを選ぼうが気にしない。僕の新しい作品が前の作品より良くなっているかぎりは。だったらそれが、作家としての僕の義務であり、もっとも優先すべき課題だろう。」
(98ページ)
これが意味することは、作品がより良い物になっていれば読者の期待に応えることができるということであり、ライフスタイルはそれができれば何をしてもよいということですよね。
その期待に応えるために、どのような生活を送るかということが重要であり、それが規則正しい生活になるのでしょう。
最高の仕事や結果を残すためには、基本的な生活、規則正しい生活こそが重要なのだ、ということを本書から学ぶことができました。
脳や身体を最高の状況にすることこそ、クリエイティブな結果を残すことができる、当たり前のことですが、忘れがちですぐに生活が乱れてしまうものです。
しかし、天才たちですら、乱れた生活では実力が発揮できないのです。
我々凡人ならなおさら規則正しい生活が必要ですよね。