「いまこそ知りたいシェアリングエコノミー」(長田 英知 著)を読んだ感想
シェアの現在、そして未来の姿を知るために
インターネットが普及して、ネットなしでは生きていけないような世の中になっていますが、それによって私たちの意識も大きく変わってきているところがあります。
様々なところで変化がみられるのですが、最近大きく変わってきているのは、物を所有するという意識ではないでしょうか。
ネットが普及する前は、物を使うためにはそれを買って使うか、誰かに借りて使うという必要がありました。
借りると言っても、親や親せきから借りたり、せいぜい友人から借りて使うということが一般的でしたよね。
しかし、最近は物の所有という意識が薄れてきているようで、それに合わせてシェアする、共有する意識が強くなってきているように感じます。
これは、インターネットの普及によって、様々なプラットフォームが利用できるようになり、さらに手数料も安くできるということが前提となって発達してきているようです。
インタネットを使えば、人件費も低く抑えることができるため、シェアするための手数料などを低く抑えることができるわけです。
そんな状況の現在、そして未来はどのような姿になるのか、ということを調べるために本書を読んでみました。
実際のシェアリング・エコノミーについて
インターネットを使って、所有しているモノや場所、さらにはスキルや時間などを共有する経済の形のことを、「シェアリング・エコノミー」と呼びます。
シェアリング・エコノミーには、様々なものがあるのですが、実際にどのようなものがあるのか見ておく方が、理解もしやすいと思います。
そこで、シェアリング・エコノミーをいくつか見てみたいと思います。
Airbnb
これは説明の必要もないほど有名ですよね。
民泊はホテルよりも安く泊まることができるため人気がありますが、Airbnbというプラットフォームができるまでは、なかなかできないことでした。
しかし、Airbnbができたことで、誰でも簡単に民泊ができますし、さらに使っていない部屋を民泊に貸し出すことも簡単にできるようになりました。
スキルのシェア
スキルのシェアも可能になっています。
ベビーシッターのスキルを持つ人が、それを必要とする人にスキルを提供するためのプラットフォーム「KIDSLINE」などがそれにあたります。
クルマ、自転車のシェア
自動車のシェアは、タイムズカーシェアなどが有名ですね。
タイムズはコインパーキングを運営している会社ですが、駐車場に止めてあるシェアカーを好きなタイミングで借りることができるため人気が高いようです。
シェア自転車は、ダイチャリなどが有名でしょうか。
町のいたるところで見つけることができますし、都内であればコンビニの前に行けばダイチャリが置いてあることが多いです。
シェア自転車は、電動アシスト付きなので、スイスイと楽に自転車に乗ることができます。
服のシェア
最近では服も買わないでシェアすることができます。
「Air Closet」というサービスは、スタイリストが選んだ服が3セット届くというサービスで、「返却期限なし」、「送料・クリーニング料不要」で新しい洋服との出会いを楽しめるため、人気が高くなっているようです。
シェアリング・エコノミーが与える影響
シェアリング・エコノミーが私たちの生活に与えるインパクトは、どのようなものがあるのでしょうか?
もちろん、あまり使わないものを買うことなくシェアできれば、かなり節約につながります。
さらに、考えるべきなのは、私たちが本業以外で収入を確保することができるようになるということです。
シェアが一般的になれば、会社に勤めている人も本業以外で収入を得られる選択肢を少ない投資コストで確保sるうことができます。
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使ってない部屋であったり、電化製品をシェアで貸し出すことができれば、簡単に収入源を増やすことができますよね。
そして、余っている部屋を貸し出すことができれば、これまた収入源が増える。
不動産投資というと、少なくともアパート1部屋を所有して貸し出すということが必要です。
そうなると、空室リスクなどがありますし、管理も大変な面があります。
しかし、自分が住んでいる場所を貸し出す民泊ならば、空室リスクもなく管理も住んでいる場所ならば、当然行うことですので負担にならないですよね。
収入源を増やすための障壁のようなものが、本当に低くなるのがシェアリング・エコノミーの特徴です。
シェアという形態になんとなく抵抗がある、という方はまだまだ多いかもしれませんが、スマホの普及などによって、そのような抵抗もますます低くなってきているということで、将来はシェアが当たり前ということになるかもしれません。
しかし、これからの時代の新しいシェアは「共有=共に所有する」ではなく「共有=共に利用する」というところに本質があると私は考えます。
(35ページ)
共に利用するということが普及すれば、物やサービスが余っているという状況が少なくなります。
誰かが所有し、普段利用しているモノが、利用されず「余剰」状態にあるときに、他の誰かがアクセスし、利用できる点が新しいシェアの大きな特徴です。
(47ページ)
このような状況は、環境問題を考えるようなときでも、とても有効な解決策の一つになるのではないかと思います。
無駄なものを作り必要もなくなり、資源を有効に使うことができますから。
副業としての可能性
これからは、人口が減っていく時代になっていくということもあり、会社の終身雇用なども崩れてきていますね。
そのような状況では、やはり収入源はたくさんあればあるほど良いわけです。
しかし、収入源を増やすために、初期投資が高い場合は、それ自体が障壁となってしまって、一般の人はなかなか取り組むことができない。
資本家や大企業だけがそのような取り組みができる、という状況だったわけです。
しかし、シェアが普及することで、物やサービスを提供する、しかもコストを低く抑えることができるようになってきているわけです。
収入源を増やしたいという場合は、何かシェアできないか、ということを考えることで、効率的に増やすことができるかもしれませんね。
シェアリング・エコノミーがさらに普及するために
シェアという概念が一般的になるためには、やはり前提条件があります。
しかし、新しいシェアのサービスは、見知らぬ企業、個人間の双方向のやり取りを「低コスト・低リスト」で実現しているところに、大きなイノベーションがあるのです。
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見知らぬ企業や個人間の双方向のやり取り、というところがポイントになるのです。
そこで重要になるのは、やはりシェアを行う上でのセキュリティ、安全性になります。
社会的共用としてのシェアを支えるもうひとつの大きな要素は、見知らぬ個人間の取引を安心・安全に行い、広げていくための制度設計とデザインです。
(62ページ)
シェアの意識が普及することで、それを悪用しようとする人が出てくる可能性がありますので、それをいかに回避するかということもシェアということを考えるときには、考慮しなければならないことですよね。
まとめ
シェアは、私たちの生活をより豊かにしてくれるものです。
高級品を購入することはできませんが、シェアなら気軽に利用できるかもしれません。
もちろん高級品はシェアの代金も高いものですが、購入するよりは安いですから。
しかし、本書でも指摘されていますが、シェアというのはそれに固執する必要はなく、必要もないのにシェアを利用したり、提供したりする必要はありません。
自分の生活をいろんな意味で豊かにしてくれるように、シェアを利用していくという意識が大切ですね。