「「伝える力」と「地頭力」がいっきに高まる 東大作文」(西岡 壱誠 著)を読んだ感想
作文が苦手?
文章を書くということは、コミュニケーションの一つであるという認識があるでしょうか?
文章というのは一方的に書く人の主張や伝えたいことを相手に伝えるということではなく、双方向に働くべきものという認識はあまりされていないように思います。
文章というのは、例えば物を売りたいという場合には、文章が営業マンになってくれたり、企画書などで多くの人を納得させるためにも重要なものですが、どのように文章を構成するべきか、組み立てるべきかということは、あまり教えられることがないような気がします。
学校などでは、作文を書く時間がありますが、私にとっては苦痛の時間であり、作文を読むこと、読まれることは本当に恥ずかしいことでした。
それは、どのように作文を組み立てればよいのか、ということが詳しく教えられていないから、というのが一つの理由だったように思います。
そこで、今回は「東大作文」というタイトルにひかれて本書を読んでみることにしたのです。
著者である西岡さんの著書を最近はたくさん読んでいるのですが、東大という言葉が必ずタイトルに入っているため、少々嫌味に感じる方がいるかもしれません。
私はそこには嫌味を感じることもありませんし、西岡さんの著書の内容はとても役立つものばかりだと思います。
ちなみに東大読書という本も書かれているのですが、ベストセラーになって漫画にもなっているので、まずはそちらを参考にされてから、この東大作文を読むとスムーズに内容を理解できるかもしれません。
もちろん本書だけでも、内容は理解できるのですが読書の仕方を知って、取材の方法がわかれば、作文を組み立てる時に役立つことは間違いないですからね。
本書の言いたいこととは
まず作文に限らず文章を書く目的は、内容が相手に100%伝わることです。
自分が言いたいことを伝えるということが目的なのですが、そのためには自分の言いたいことだけを長々と書いているだけでは、当然伝わるものではありません。
作文の場合も同様に、「自分が一方向的に書くのをやめて、相手も能動的になれるような、双方向的な文書で書く」ことで、伝わる文章を書くことができ、また地頭も鍛えることができるようになるのです。
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双方向的ということを、文章を書いているときには忘れてしまうことが多いものです。
自分が伝えたいことを書くことだけを考えて、読む人がいるということを忘れてしまうと、伝わらない文章が出来上がってしまうものです。
例えば横文字を使って文章を書く場合があるかもしれませんが、全員その言葉を知っているだろうと思って文章を書いても、その言葉を知らない人が大勢いれば、その文章は全く伝わらないものになります。
それはしゃべるときも同じことで、誰も知らない横文字を、誰もが知っている事のように話すと全く伝わらないのと同じです。
文章を書くときにも、普通のコミュニケーションと同様に、相手とのやり取りがあることを意識しながら組み立てていくことが重要だということですね。
伝わる文章の作り方
そして、双方向的な文章を書く必要があるということを理解したうえで、その後はどのようにすれば伝わる文章が書けるのか、ということが細かく解説されています。
文章を書くうえでありがちなのが、何も考えないで、どのように構成するかを考えることなく、いきなり文章を書き始めるということです。
これで上手に文章を書けるというのであれば、それを続けるだけでよいわけですが、やはり人に伝える文章、双方向的な文章を作るためには、事前の準備が重要になってきます。
そのために、本書ではこのように書かれています。
最後に「要するに何が言いたかったのか」をまとめて終わるというのが、作文における絶対の原則なんです。
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当たり前と言えば当たり前のように感じることですが、これは最後にまとめればよいということではなく、作文を書き始める前に「何が言いたかったのか」ということを決めておくということです。
これはいわば目的地のような働きをするもので、それがわからなければどこに向かっているのかわからない状態になってしまうため、文章も伝わりづらいものになってしまう傾向があります。
ですから、作文を作るときには「あとがき」から始めるということになります。
最後に言いたいことを持ってくる方が、圧倒的に文章が書きやすい
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そのことについては、車のカーナビをたとえにされています。
カーナビで目的地を入力しなければ、どこに行くのかもわからないため、全然違う方向に向かってしまう可能性があります。
しかし、カーナビに目的地が入力されていれば、そこに向かう最短距離が表示されて、効果的にそこにたどり着くことができます。
その目的地の役割が、最後に何が言いたいか、ということになるのですね。
双方向的な作文を作るには
そして、文章を組み立てるうえで重要になるのが双方向的な作文ということになりますが、最後の目的地を決めて、如何に双方向的な文章を作るか、ということが解説されています。
双方向的ということは「自分 → 相手」という一つの方向に加えて、「相手 → 自分」という方向が必要になります。
文章を組み立てるのは自分ですから、「自分 → 相手」という方向は比較的簡単にできそうですが、「相手 → 自分」についてはどうすればいいの、という感じですよね。
「東大作文」の真髄は「双方向性」であると言いました。「主張作り」は「自分 → 相手」でしたが、「目的作り」は「相手 → 自分」。相手からの矢印を作ることで、双方向的で理解しやすい作文が作れるようになるのです。
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相手からの方向を考えるには、目的作りということになるんですが、それはいったいどういうことなのでしょうか?
作文を書く前に、自分は何が言いたくて、それによって読んだ相手がどうなるのが理想なのか、ということをしっかり決めておくわけです。
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読んだ相手がどうなるのが理想的なのか、ということを考えるということですね。
相手がどういう行為をすることで、その文章を書いた意味があったことになるのか、主張を理解してもらえば十分なのか、それとも相手に何かの行動をしてもらうことが理想なのか、という相手がどうなれば理想なのか、ということを文章によって実現させていく、ということになります。
自分の主張だけを考えて文章を書く人が多いわけですが、その主張で相手にどのようになって欲しいのか、どのような影響を与えたいのか、ということまで考えて書く、ということはあまり意識されていないものです。
しかし、この双方向性を意識して書くことで、例えば企画書やプレゼンテーション資料の作り方が全く変わってしまうことがあります。
相手に合わせて主張を展開していくのと、ただ自分の主張だけを並べていくのとでは、相手に届くものが全く違うということは、簡単に理解できるのではないでしょうか?
これは普通のコミュニケーションでも同じことですが、文章になると忘れてしまうことが多いので注意しなければいけませんね。
まとめ
文章というのは、双方向性を持った内容にする必要があり、相手から自分に向かう方向もしっかりと意識された内容にする必要があります。
相手にどうなって欲しいのか、という意識があるのとないのでは、結果に大きな違いが出てくるはずです。
出世していく、成功していく人というのは、概して文章が上手だと言われているのですが、それは難しいことを書いているのではなく、相手が存在する文章になっているかどうか、というところがポイントなのかもしれませんね。