読書好きけんの雑記ブログ(ヘルシー志向強め)

日々思いついたことをシェアしたいと思っています。読書で得た知識も備忘録を兼ねて、わかりやすく感想をアップしようと考えています。

企業が内部留保をため込んでいる?意味が間違っているかもしれません。

内部留保は悪?

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内部留保を減らせ、賃金をアップして労働者にしっかりと還元されるべきだ、株主に配当などで株主に還元しないなんてけしからん!

 

こんな声を良く聞きます。

 

アベノミクスが始まってから、株価が上昇しましたし、日銀の金融緩和でお金の量が増えているけれど、賃金があまり上がらないため一般の人たちが景気が上向いているという実感につながらない、ということが理由の一つのようです。

 

確かに賃金がアップすることは、誰にとってもありがたいことですし、それで消費者がたくさんのものを購入するようになれば、企業の収益もアップして利益を増大させる、という嬉しいスパイラルになります。

 

しかし、賃金が全く上がらないけれど、物価だけは上がっていくという状況を作り出しているために、企業が現金をため込んでいるということを指摘するために、内部留保という言葉を持ち出してきているようです。

 

企業が現金をごっそりと蓄えているとすると、確かに賃金が上がらないということは企業の責任ということにもなりますが、先ほどの嬉しいスパイラルのことは企業も十分に認識しているはずです。

 

そこから考えると、実は企業は現金をため込んでいるということが間違いなのでは、という気がしてこないでしょうか?

 

この内部留保という言葉は、大手のマスコミや政治家も使っている言葉なのですが、その意味がかなりあいまいなニュアンスを持っていると私は思っています。

 

内部留保というのは、企業がタンス預金のように現金を蓄えているようなイメージを連想させますが、実は意味が違っていて、マスコミや政治家が間違って使っている可能性がある、ちょっと厄介な言葉なのです。

 

内部留保とは

 

そこで内部留保の意味を確認してみたいと思います。

 

内部留保というのは、定義があまり明確ではないようなのですが、「利益剰余金」のことだと考えられています。

 

利益剰余金とは、純利益(売り上げから経費や税金などを引いて残った利益)の中から、株主への配当を引いて残ったものです。

 

ちょっと難しいかもしれませんが、これは貸借対照表の「純資産」の部に計上されるものです。

 

純資産の部に計上されるものは、実際に現金を表すものではなくて、その企業が計算上ではどれだけの利益を企業に残したか、というだけのものです。

 

計算上での金額ですから、その利益剰余金が現金としてそのまま残っているかどうかは、そこからは判断することができないのです。

 

利益剰余金が50億円だったとして、その現金をそのまま持っておくという企業もあるかもしれませんが、通常はそのお金は翌年以降のビジネスに回されるものです。

 

工場などの設備投資に回されることもあれば、工場そのものを建てるために土地を購入する金額に充てたり、また企業も投資していることが多いですから、国内外の株式を購入したり債権を購入したりと、企業が成長していくために使われるものです。

 

例えば設備投資を25億円使って行ったとしても、利益剰余金は25億円に減るわけではなく、貸借対照表の左側の固定資産のところに25億円が増えて、流動資産の現金が減るだけであり、利益剰余金は50億円のままです。

 

そのような事実があるため勘違いしやすいわけですが、内部留保=現金」という発想が間違っていると言わざるを得ません。

 

企業のため込んでいる現金を探すなら

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そのため、企業が現金をため込んでいるかどうかを判断するためには、内部留保の数字は当てにならないということです。

 

内部留保の金額が高くても、企業内に現金が残っていないという可能性も十分にあります。

 

どうしても企業がため込んでいる現金、また現金相当のもの、例えば有価証券や債券などを見たいというのであれば、貸借対照表の左側に計上されている現金や預金、有価証券などを確認しなければわからないのです。

 

もちろん現金をたくさん持っていても、借金がそれ以上にある場合もありますので、同時に貸借対照表の右側の負債もしっかりと確認しなければいけません

 

このように、企業がどれだけ現金をためているのか、ということは貸借対照表をすべて見ていく必要があるわけです。

 

そのうえで現金をたくさん持っている企業は、「キャッシュリッチ」な会社と言われたりします。

 

もちろんキャッシュ、現金を残しているのは意味があって残しているはずですので、それを一概に社会に還元すべき金額ということは言えないのが現実です。

 

内部留保という言葉になんとなく貯金のようなイメージを抱かせるものがありますので、言葉が良くない気もしますね。

 

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今まで見てきたように、内部留保は通常は翌年移行のビジネスに活用される重要な企業の資源となるものです。

 

そのため、そこから賃金をアップさせるような現金を引き出すことは通常は無理な話です。

 

内部留保を取り崩して、賃金を上げろ、雇用をしっかりと守れ、ということは正確な言葉で言うのであれば、「赤字を垂れ流してでも賃金を上げろ、雇用を守れ」と言っているのと等しいことになります。

 

安易に内部留保を取り崩せということはできないわけです。

 

まとめ

 

ファンダメンタルズ分析で投資している方の中には、このような事実を知っている方は多いかもしれませんが、一般的には知られていないことです。

 

そのため、「内部留保=悪」のようなイメージがあります。

 

マスコミや政治家というのは、できるだけ言葉の意味を正確に伝えることが仕事だと思うのですが、彼らは自分たちがお金を稼げればそれでよい、という考えなのでしょうか?

 

内部留保を叩くことで、雑誌や新聞などが売れるというような理由で、調べもしないで報道しているとするならば大変な問題だと私は思うのですがいかがでしょうか?