デフレ脱却と言いながらインフレ対策を行う日本政府
経済の成長を感じることができない
日本の経済成長は、その他の先進国と比べてもかなり遅く、むしろ成長していないと思っている人の方が多いでしょう。
景気というのは「気」という言葉があるように、人々の気分も大きくかかわってきますので、成長してないという気持ちの場合は、お金を使おうという気持ちよりも、将来のために使わないで貯めておこうという気持ちが強くなります。
経済が成長していないのですから、将来は当然不安になってしまい、お金を使う気持ちも小さくなるのは理解できると思います。
しかし、もちろん経済が成長しないのは、人々の気分だけの問題ではありません。
日本の成長を止めているのはデフレ
日本の経済成長を阻害しているのは、言うまでもなくデフレです。
デフレとは簡単に言えば、物の価格が継続的に下落していくことで、そのデフレが日本では長期間続いているために経済成長が進まないわけです。
また、物の価格が下落していくということは、同時にお金の価値が上がっていくということを意味しています。
ですから、お金を貯めるということはデフレ下においては正しい行動ということになります。
ではデフレではなぜ経済の成長が進まないのでしょうか?
経済が成長するためには、お金が循環することが大前提です。
経済の成長するということは、企業がたくさん利益を出して、それが労働者の給料に反映されて給料が上がり、それで人々が物やサービスをたくさん買うという状況が繰り返されていくことです。
つまりたくさんお金を使うことが経済を成長させていき、それが私たちのところに戻ってくるときには、さらに大きな金額になって帰ってくるということが実現されなければ経済は成長しません。
これが実現されるためには、物やサービスがたくさん売れる状況にならなければならず、それはデフレの反対であるインフレになる必要があります。
物がたくさん売れるということで、物の価格を上げることが可能であり、それがインフレを引き起こすのですが、経済が成長していくためには、マイルドなインフレが続く必要があるのです。
価格を上げることができれば企業の利益も増えて、従業員の給料もアップさせることができますし、株主にも利益を還元することができます。
デフレ下ではお金が使えない
インフレにすれば経済は回復して成長していくわけですが、それはなかなか難しいのが現状です。
日本はデフレに苦しんでいる状況ですが、そのデフレはお金の価値を上げるということは先ほどお話ししました。
そのような状況では、物を買おうとするよりも、お金を貯めようとすることが正しい行動ですよね。
価値が上がることが分かっているものは、できるだけ使わないで貯めておくのが正しいですから。
さらに、企業の経営を成長させるためには、設備投資や研究開発費などにお金を使う必要があります。
そのような資金は銀行などからお金を借りて行われるのが通常ですが、お金の価値が上がっている状況では、借金は借りた時よりも返す時の方が価値が高くなっていることになります。
つまり借金の金額が実質的に増えていくということです。
こんな状況では、企業は設備投資や研究開発費にお金を使うよりも、ためておいた方が良いと考えるのは当然で、これまた正しい行動ということができます。
デフレ下の日本では、このように誰もが正しい行動を行っていることになり、そこから抜け出すためには、全員が経済的に間違った行動をとる必要があるわけですが、そんなことは不可能ですよね。
ちょっと難しい経済用語でこの状況を、「合成の誤謬」と呼ばれます。
個々の正しい経済活動(ミクロ経済)が、集まって間違った結果を生み出す(マクロ経済)状態のことです。
企業が内部留保をため込んでいる、賃上げをしないのは当然
ここまで見てきた通り、個人や企業は正しい行動を行っています。
デフレ下では、企業はお金を使って積極的に設備投資を行って、給与もどんどん上げていく、ということができるわけもなく、できるだけお金を使わないようにしようと正しい行動をとっています。
その状況を理解しないで、内部留保を吐き出せ、給料を上げろと言ってもそれは無理な話です。
お金をもっと使え、高い食事をしろ、と言われても誰もやろうとしないのと同じことです。
マクロ経済を改善するのは政府の仕事
マクロ経済が間違った状態にあるときには、それを改善することができるのは政府です。
政府が行うべきことはたくさんあるのですが、重要なことは財政支出を増やすことです。
公共事業を増やすなどが一般的ですが、合わせて重要になるのは「減税」です。
デフレでは減税してインフレには増税するということが当然の姿なのですが、日本政府は真逆の対応を取っていることになります。
消費税を減税して、企業の投資に対しても減税を行うなど、しっかりと財政出動を行うことで、デフレを脱却させる必要があるわけです。
消費税が安い方が当然買い物が増えますし、投資にかかる税金が低ければ当然投資が増えることになります。
もちろんこれだけではデフレは止めることができない可能性があり、ある程度の保護主義や規制を強化する必要もあるのですが、それも民間でできることではなく政府の仕事です。
しかし、バブル崩壊後の平成の時代の政府の政策はどうだったでしょうか?
構造改革の名のもとに、財政支出の削減とそれに伴う小さな政府、消費増税、規制緩和、グローバル化、企業の民営化を進めていきました。
これらの政策はインフレ対策であり、インフレを起こさないようにする政策なわけですが、バブル崩壊によってデフレに陥った日本にはインフレ対策など必要なかったわけで、このような政策が日本経済にとどめを刺したのです。
今日本に求められているのは、インフレ率2%を達成するまではやめないという強い決意を伴った財政支出です。
高市早苗前総務相が自民党総裁選に出馬の意向を伝えている中で、そのことに触れています。
ぜひとも次の総裁は誰になるにせよ、デフレ脱却まで財政政策を進めていくことをお願いしたいです。
まとめ
お金の価値を下げるためには、お金をたくさん供給することも重要ですが、それは日銀がいま進めているところです。
日銀が全く量的緩和を行ってこなかったということも、デフレを進めてしまった原因であり、政権交代の時の民主党と日銀の白川総裁の時はどん底でした。
しかしアベノミクスにより、日銀は大きく舵を切って金融緩和を進めてきたため、若干は景気の回復ができたのは事実です。
しかし、政府が増税など日銀の金融政策を無意味にしてしまう政策を行っているため、なかなかアメリカのような強い成長ができない状況が続いています。
政府や官僚の間違った政策に苦しめられる生活はもう御免ですよね。
今行うべき正しい行動をぜひとってもらいたいものです。