「100歳までお金に苦労しない 定年夫婦になる!」(井戸 美枝著)の感想
人生100年が不安?
人生100年という触れ込みで、保険会社などがCMを流していることから、退職後に不安を感じている方が多いようですね。
それに加えて年金も十分ではない、というニュースがたくさん報道されるため、もうどうしてよいのかわからない、というケースも増えています。
例えば退職が60歳だとして、年金だけで生活できるかどうか、ということがイメージできないということはないでしょうか?
65歳が定年も場合もありますし、60歳で退職して65歳まで再雇用される、そして65歳から年金を受給するなどの方法もありますが、どのような場合であっても、具体的にイメージすることができない、ということが漠然とした不安につながっているのだと思います。
しかし、そこで止まっていては不安は解消されませんので、何とか解消する方法がないか、ということでこの本を読んでみることにしました。
本書の根底にある思想
根底にある思想というと、重々しい感じがするかもしれませんが、やはり読書をするときには、その本がどのような考えに基づき書かれているか、ということを読む前からある程度把握しておくことはとても大切です。
私は、この本が基本にしている考えは、「お金は(足りない分)だけ用意すれば良い」ということになると思います。
つまり、重要なことはどれだけ足りないのか、ということを正確に把握するということです。
報道などでは、老後には夫婦で1億円必要だ、というようなものもありますが、そんなものは無視すればよく、重要なことは老後をいかに苦労なく幸せに過ごせるか、ということからある程度の金額を算出して、年金などで足りない部分を今から補っていくという発想です。
ファイナンシャルプランナーに相談するとかえってくる答えが、このようなものですので、すでに相談されている方は目新しい物はないのですが、相談されていない場合はまずはこのような本で知識を深めるということは重要でしょう。
今から意識すべきこと
本書では生活で意識すべきことを、3原則のような形で紹介しています。
- 入ってくるお金で生活する
- 借金しない
- この二つを一生続ける
当たり前と言えば当たり前のことなのですが、実際守れている方の方が少ないという気がします。
特に借金は、将来のお金を今使うということですから、使うのであれば如何に上手に借金をするか、ということがとても重要です。
クレジットカードや、分割払いで何かを買うということも借金ですし、忘れがちですが住宅ローンや自動車ローンなども借金です。
全てを自分でコントロールできる範囲での借金をする、ということなら良いのですが、できる限り入ってくるお金で生活するということを意識しなければ、老後を幸せに迎えることができない可能性が大です。
なぜなら、老後は今よりも収入が減る可能性が大であるにも関わらず、生活レベルを借金で上げてしまうと、それを下げることはかなり難しいからです。
今から考えるべきこと
そして今から考えておくべきこととして、次の3つが提案されています。
- 定年後の年間支出額を検討し「必要額」を知る
- 定年後の年間収入を知る
- 年間支出から年間収入を引き、余命年数をかける。それに人事出費額を足す。そこから得られた数字が「定年夫婦」の必要総額
ここから得られた金額が足りない金額となりますので、今から準備していくことになります。
この金額を大まかであっても、今から把握することができれば、漠然とした不安をかかて生活するよりも、解決しようと動くことができますよね。
老後であっても必要となる費用としては、
- 基本生活費
- 医療と介護などの備えのお金
- イベント資金
となります。
そして、これらの金額についてどのように考えるべきか、ということが本書には詳しく書かれています。
例えば定年後の月額基本生活費は、定年前の生活費の約7割が目安
(54ページ)
のように具体的に考えていく方法が書かれています。
保険には入るべき?
保険については、入るべきなのか悩んでいる方も多いと思います。
私は保険については、必要なもの以外ははいる必要はないのではないか、と考えていますが、本書でも同じような考えが書かれています。
保険が必要なのは、もし万が一のことが起きた時にダメージが大きくて対処のしようがない場合、具体的に言えば火災保険と自動車保険でしょう。
(100ページ)
私は地震保険も入るべきだと思っていますが、確かにこの2つはダメージが大きいので入るメリットがあると思います。
しかし、それ以外はあまりメリットを感じないのが実際のところです。
例えばがん保険についてはこう書かれています。
がん保険のメリットは日数無制限の入院給付金。入院が長引いても安心です。でも今は日帰り治療が主流。
(99ページ)
保険に入ることで得られるメリットは何か、ということをしっかりと把握して入る必要があるということです。
重要なことは、老後に余裕がありメリットを感じるのであれば、保険に入ることは自由ですが、家計の負担が大きくなるにも関わらず、保険に入ることはいかがなものかということです。
ちなみに、医療については健康保険でかなりの部分がカバーできる、ということはあまり知られていないため、一度ご自身が加入している健康保険について調べてみることをお勧めします。
民間の保険がなくても、かなり手厚くなっていることを知れば、保険についても余裕をもって考えることができると思います。
運用について
年金が足りないということから、今から運用して老後に備えたいという方も多いと思います。
運用を考えている方は、一度は積み立てNISAやiDeCoという言葉を聞かれたことがあると思います。
どちらもメリットは一定額まで税制優遇があるということ、つまり税金を払わなくてもよいということです。
どちらも投資信託での運用が進められています。
しかし、その際に選ぶべき投資信託、ファンドについては少し解説があります。
アクティブファンドは、投資信託の運用会社(ファンドマネージャー)が個々の株式銘柄を調査、分析し株価指数を超える運用成績を積極的に目指す投資信託です。その分運用管理費用(信託報酬)が高めです。
(131ページ)
私はアクティブファンドは選ぶべきでないと考えています。
なぜなら、アクティブファンドで株価指数を超える運用成績を残しているファンドはごく少数です。
しかも運用管理費用も高いということになると、ダブルパンチでマイナスになる可能性もあります。
ですから、信託報酬が低いインデックスファンドで運用すれば十分だということになります。
年金を増やす方法
そして、年金額に不安があるという方が多い中で、いくつか年金を増やす方法が紹介されています。
一番わかりやすいのは、年金を受け取る年齢を遅らせることです。
1年あたり約8%受給額が増えるので、65歳の支給開始年齢を70歳まで遅らせると最大42%も受給率が増えます。
(150ページ)
もちろん長生きした場合に得をするという話ですので、個人個人に合わせた支給開始のポイントを定める必要がありますが、知っておくべ知識だと思います。
他にも年金を増やす方法が紹介されていますので、参考にされるとよいと思います。
まとめ
年金について不安を持っている方は多く、全く不安がないという方の方が少ないでしょう。
しかし、ただ漠然と不安に思っているだけではなくて、如何に対策すべきかということがわかれば、不安もその分小さくなるものですよね。
本書は、難しい用語が使われていたはしないため、誰でも読みやすくなっています。
入門書のようにして読まれるとよいと思います。