「マンガーの投資術」(デビッド・クラーク 著)を読んだ感想
投資の神様のパートナー
チャーリー・マンガーは、バークシャー・ハザウェイの副会長です。
バークシャー・ハザウェイの会長は、ウォーレン・バフェットです。
ウォーレン・バフェットと言えば、世界一の投資家として有名ですが、彼に多大な影響を与えているのがチャーリー・マンガーだと言われています。
チャーリーの最大の功績は、今日のバークシャー・ハザウェイを設計したことである。彼が私に示した青写真はシンプルだった。そこそこの会社を割安な価格で買おうとするのではなく、すばらしい会社を適正な価格で買いなさい
この指示通りに投資事業を進めてきた結果として、現在のバークシャーがある。いわば私の役割はゼネコンであり、バークシャーの子会社のCEOたちが下請業者として実務を担当してきたのである
ウォーレン・バフェットに多大な影響を与えたと言われるチャーリー・マンガーの思想を本書では、学ぶことができるということで、その中身に大きな期待を持って読みました。
安直な儲け
チャーリー・マンガーが戒めているのは、やはり手っ取り早くお金を稼ぎたいという気持ちです。
「手っ取り早く金持ちになりたい」という欲望は非常に危険である。
この気持ちを抱いているということは、今はまだお金持ちではないということになりますね。
お金持ちになりたいと考えているのですから当然ですが、その場合は手元に資金が十分にないということを意味します。
しかし、お金持ちになりたい、しかも手っ取り早くなりたいわけですから、手元にある十分ではない資金でお金持ちになろうとすれば、株式などの短期的な変動に賭ける必要があります。
どのような証券あるいは派生商品も、その短期的な市場価格は、収益の基礎となる事業や資産の長期的な価値とは関係のない事象に翻弄されてしまう。
短期的にお金持ちになりたい、という人は他にもたくさんいるわけで、それぞれにたくさんの情報を持って行動していることもあり、本来の価値や価格などとは全く関係のないことで、短期的な変動が起こってしまうことがあります。
大暴落のような場合は、必要以上に株価などが下落することがありますが、それは人の恐怖心が投げ売りが投げ売りを呼ぶような状況になっているからです。
そして、その感情的な行動をとらせているのが、やはり手っ取り早くお金持ちになりたいという感情です。
少ない金額で投資をして、それを何倍にも増やすためには、どうしてもレバレッジを効かせた取引を行う必要があります。
レバレッジを効かせるというとかっこよく聞こえるかもしれませんが、要は借金をして投資をしているのと同じことです。
ですから、誰もが大当たりを期待しながらレバレッジを効かせた取引を行い、その通り行けばよいわけですが、そうはいかないのが投資です。
ひとたび下落し始めれば、冷静な判断も難しくなっていきます。
それは、少ない資金をさらにレバレッジを効かせて投資に使っているため、下落してしまうとその少ない資金がなくなるどころか、レバレッジを効かせていることからマイナスになる恐れが出てくるからです。
そんな状況では、どれほど頭が良い人でも正しい判断をすることが難しいでしょう。
その結果として、少ない資金すら失ってしまい、その後に訪れる絶好のチャンスをただ見ているだけ、という結果になってしまうのです。
手っ取り早くお金持ちになる方法は存在しないと考え、投資もビジネス、仕事と同じと考えれば、地道な正しい行動の積み重ねが大切だということが分かりますよね。
投資というと、ビジネスや仕事とは関係なく、ギャンブルのように考える人が多いのが不思議です。
ビジネスや仕事は地道にスキルを積み重ねていく必要があり、長い期間が必要だということが分かると思いますが、投資となるとそのような積み重ねは必要ないと考えるのは間違いだ、ということをここから学ぶことができますね。
金融危機はチャンス
チャーリー・マンガーは、金融危機はチャンスと述べていますが、それは偉大な投資家全員が言っていることと同じです。
金融危機というと、株価などが暴落するため、多くの人々が株式を売ってしまう状況です。
投げ売り状態で、株価はどんどん暴落していくわけですが、価格が下がっていくわけですから、通常の買い物をしている場合ならば、本当に望ましい状況になっていますね。
いわば歳末謝恩セール的な状況で、素晴らしい企業の株価が、バーゲン価格で購入できる状況です。
ですから、このような状況でチャーリー・マンガーのような優れた投資家は行動を開始します。
しかし、ここで大切なことがあります。
マンガーもバフェットも、金融危機のような不可避の出来事がいつ起こっても対応できるように ー リターンが低くなることは承知のうえで ー 常に現金のポジションを積み上げている。そして実際に危機が生じ、株価が暴落した局面では、現金の威力にモノを言わせて買いに走るのである。
暴落の局面を迎えたのはいいけれど、肝心の現金がないということではその状況を上手く利用することができません。
現金で保有するということは、リターンが少ない、つまり利息がほとんどつかないわけですが、偉大な投資家であっても現金で一定金額持っているのです。
ここでも手っ取り早くお金持ちになりたい、という気持ちはマイナスに働く可能性がありますね。
お金持ちになりたいと思って、すべての資金を投資してしまって、チャンスが到来しても何もできない、という可能性がありますから。
ですから投資には、常に冷静な判断が求められるということです。
忍耐
今までのことはすべて、忍耐という言葉に集約されるのかもしれません。
マンガーの世界では、忍耐とは、手元に十分な現金を用意しておいて、偉大な企業の株価が下落して適正な水準になるまで、集中力を切らさずに持ち続けることを意味する。
この集中力を切らさずに持ち続ける、ということは簡単なようで難しいものです。
投資の経験があるとわかると思いますが、魅力的に見えるものはたくさんありますし、FXなどで稼いでいるという話を聞くと、どうしても自分もそれらをやりたいと思ったりするものです。
しかし、そして現金を失ってしまって、チャンスを失うというのは多くの方が経験されているのではないでしょうか?
FXなどがわかるのであれば、そこに投資するのもよいと思うのですが、わからないことには手を出さず、チャンスが来るまで何年でも待つ、という忍耐力の重要性をチャーリー・マンガーは指摘しているのですね。
実際にチャーリー・マンガー、そしてウォーレン・バフェットは現金のままポジションを持って、何年もチャンスを待つことが多いようです。
まとめ
本書ではチャーリー・マンガーの言葉をピックアップして、それについて著者が思うことを付け足していくという構造になっています。
したがって、チャーリー・マンガーの思想だけではなく、著者の思想も入っている部分があるかもしれません。
しかし、その内容はすべての投資家が読むべき内容になっているのではないか、と感じてしまうほどに素晴らしいと思います。
具体的な銘柄選択の方法などは書かれていませんが、それを行うにあたって必要な基礎となる考え方は、ここにまとまっています。
まずは、本書に書かれていることを理解しなければ、株式投資を行うべきではない、と思えるような内容になっています。
また、投資に限らずビジネス全般に通用する考え方が記載されていると私は感じました。