「脳が認める外国語勉強法」(ガブリエル・ワイナー著 花塚恵訳)の感想
外国語の習得がしたいけれどあきらめた?
英語だけではなく、数か国語話せるようになりたい、というのは誰もが持っている願いではないでしょうか?
少なくとも私は持っています。
しかし、多くの日本人は英語を数年間学んでいるにも関わらず、英語を話すことができないし、ましては他の外国語を学ぶなんて無理、というような雰囲気があります。
道案内も電話に出ることも難しい、という人も多いですよね。
日本人は、語学が苦手な民族なのでしょうか?
実はこれは、日本人に限ったことではなく、外国語を習得しようとする他の国の人も、同じような苦労をしているようです。
ですから、日本人だから英語が話せない、外国語の習得ができない、ということではないので安心していただきたいと思います。
とはいえ、外国語は話せた方があらゆることでメリットがあります。
仕事の幅も広がりますし、脳のアンチエイジングなどにも効果がありそうです。
しかし、外国語の勉強を始めても、単語の記憶もできないし、会話なんて夢のまた夢、という感じになってしまうため、あきらめてしまうことが多いですよね。
私も出来れば英語以外の言葉を習得したいので、この本を読んでみることにしました。
外国語の勉強に必要なことは?
ところで「脳が認める外国語勉強法」というタイトルは、かなり魅力的に感じますがいかがでしょうか?
「脳が認める」ですから、おそらくかなり合理的な勉強法なのだろうということは推測できますね。
そして、簡単に語学の勉強ができるのではないか、という感じすら持ってしまいます。
そのような誤解があるかもしれませんので最初にお断りしておきますが、この本は簡単に語学が習得できるというたぐいの本ではありません。
2週間で英語をマスターとか、3か月でスペイン語を習得できる、というような本ではありませんので、そのような期待を持っている方には、得られるものはないかもしれません。
語学というのは、いくら効率的に勉強しても長い間勉強をして習得するものです。
脳は徐々に新しい言葉に慣れていくため、短期間である程度のところまで行くことはできても、完全に習得するということはできないものです。
ですから、語学には継続が必要なのですが、その秘訣は「脳を喜ばせる」ことだと、本書では結論づけています。
それはどこでも聞くことであり、目新しいことでもないし、脳を喜ばせることができないから苦労している、という感想を持っていますか?
しかし、この本に書かれている外国語勉強法は、著者の切羽詰まった経験から生まれた実践的なものですので、多くの方に役に立つのではないかと思います。
著者は、ミドルベリー大学が主催する語学研修コースで、上位のクラスに入りたかったので、試験でズルをしたのだそうです。
フランス語のクラスだったようです。
オンラインで実施されたクラスを決める試験だったので、著者はグーグル翻訳とフランス語の文法を教えてくれるサイトを使って回答したのだそうです。
カンニングしているのですから、結果が良いのは当たり前で、
「あなたのクラスは中級レベルです」
(17ページ)
という連絡が届いたそうです。
嬉しい反面、まずい状況になったそうで、その後に面接がありフランス人の前に座って15分間様々なことを話さなければならず、それが最終的なクラス分けになるとのこと。
主催側もオンラインだと、インターネットを使ってズルをする人が必ずいる、ということに気が付いているはずですから面接を設けているのでしょうね。
慌てて著者は、効率的な語学学習の方法を、インターネットなどを使って調べて実践したそうです。
そして、地下鉄に乗っている1時間を使って、3000のフランス語と文法事項を覚えることができたそうです。
覚えることに使った期間は3か月、そして面接を迎えました。
面接官が「Bonjour」というと、著者も「Bonjour」と返します。
そして、面接が進むにつれて著者は驚きを隠せなかったと言います。
面接官が言っていることも、自分がどう返すのかもすべて分かったからだというのです。
たどたどしい口調ではありましたが、しっかりとフランス語で受け答えができたこと、そして、著者にとってフランス語で誰かと会話をしたのは、この時が初めてだったことに自分自身で驚きを隠すことができなかったそうです。
その経験をもとにして作られたのが、脳が認める外国語勉強法ですから、かなり実践的なことは間違いないのではないでしょうか?
外国語を学ぶための原則
外国語を学ぶときに、最も苦労するのは何かというと、やはり覚えるということではないでしょうか?
単語を覚える、文法を覚える、フレーズを覚えるなど、結局はあらゆる場面で覚えるものがあり、それが膨大に存在していることが、外国語を習得することを困難にしている原因ですね。
そこで、本書はいかに記憶を効率的に行うことができるか、ということに重きが置かれているように感じます。
そして、5つの原則が解説されています。
- 脳の「忘れるフィルター」と突破する
- できるだけ楽をする
- 「思い出す」と忘れない
- 忘れる直前に思い出す
- 過去の記憶を上書きする
この5つの原則に沿って、単語や文法事項を記憶していきます。
外国語を効率的にマスターするために
5つの原則に沿って勉強していくことで、忘却というフィルターを通り抜けて、脳に単語などを記憶させることが効率的に行えるようになります。
そして、外国語をマスターするためのカギが3つあります。
- 発音を最初に学ぶ
- 翻訳しない
- SRS(分散学習をシステム化するツール)を使う
この3つの鍵に沿って勉強していくことで、効率的に外国語をマスターすることができます。
私たちは学校の勉強に慣れているために、発音を後回しにして文字で単語を記憶しようとすることが多いです。
しかし、外国語というのは言葉ですから、正しく発音できなければ通じませんし、単語などを覚えるときにも、発音がわからないと覚えることができません。
発音の基本的なルールを最初に身につけたうえで、正しい発音を察する力を磨きながら、ほかの学習も並行して行う
(94ページ)
日本語もそうだと思いますが、話し言葉と書き言葉の能力はともに成長させていくべきであって、それはどの言語を学ぶときでも同じことですよね。
Ankiを使う
そして、この本の特徴としては、パソコンやスマートフォンで使うことができるアプリである「Anki」を、かなり強くアピールしていることがあります。
これはAnkiを必ず使うべきということではなくて、先ほどの3つの鍵の3番目であるSRSを使うという意味ですので、分散学習を管理する、またシステム化しているアプリなら何でもよいですし、手書きが良いという人は、手書きのフラッシュカードを使って行っても構わないと書かれています。
しかし、私はAnkiを使っているのですが、かなり優れたアプリですので、これと決まったアプリがないという方は、Ankiを使えばよいのではないかと思います。
今まで見てきた原則やカギなどを理解して、如何に効率よく覚えやすくAnkiなどのフラッシュカードにしていくか、ということが書かれているため、外国語を効率的に勉強したいという方にはお勧めの内容となっています。
まとめ
私はできればいろんな言語を習得して、通訳や字幕などを介さないでコミュニケーションをとりたいと思っています。
しかし、なかなか単語などが覚えられないと思っていたのですが、本書に沿ってAnkiでフラッシュカードを作りながら勉強していると、あまり苦労することなく記憶ができるようになってきたと感じています。
そして、この本に書かれている内容は、何も外国語の勉強に限定する必要もなく、資格試験や受験などにも応用することができると思います。