ビットコインなどの仮想通貨は貨幣になる?
仮想通貨は貨幣になるのか?
ビットコインが益々加熱しているようで、投機熱が熱くなっているようです。
ビットコインに限らずですが、仮想通貨全体が投機対象となっているので、多くの方が仮想通貨に投機していますね。
投機対象となっている仮想通貨は、通貨としての機能を期待することができないというのが経済学者の意見です。
それはなぜかというと、投機対象となってしまうと価格が一定にならないからです。
1円は1円と常に決まっている状況でないと、そのお金を使うことができないというのは、よく考えれば当たり前のことです。
1円が次の瞬間10円になったり、1円未満の価値になってしまうような場合は、貨幣としての機能を果たすことができません。
ですから、ビットコインをはじめとする仮想通貨は、価格がころころと変わってしまうことから、貨幣としての機能を持つことがおそらくできない、というのが経済学者の大方の意見なのです。
もちろん、誰も将来のことはわかりませんから、ビットコインが通貨になるという可能性もあります。
可能性としてはほぼゼロに近いですが、世界の通貨機軸である米ドルを駆逐してしまう可能性もないわけではありません。
しかし、私はビットコインなどの仮想通貨が通貨として流通してしまうと、かなり恐ろしい世の中になるのではないかと思います。
経済学的見地から考えると
経済学的なことを考えていくと、なぜ恐ろしいのかということがわかってくると思います。
経済はグローバル化によって世界とつながっているのが現在の私たちの世界ですが、これも経済学的な考えから実現していることです。
経済学の資本主義を考えるときに、大きく分けて2つの考え方があります。
新古典派と不均衡動学派の2つです。
新古典派経済学の考えは、アダム・スミスから始まるもので、市場の「神の見えざる手」の働きに信頼を寄せるものです。
資本主義をどんどん純粋できれいなものにしてしまえば、経済の効率性や安定性も実現される、そしてそれを地球全体の市場を覆いつくしてしまう状況を作れば、経済は理想的なものになるという考えです。
もう一つは不均衡動学派で、ジョン・メイナード・ケインズが代表的な学者です。
この学派によれば、資本主義には理想状態はなく、資本主義を純粋にしていくと、経済の効率性は増すかもしれませんが、逆に安定性は失ってしまうことになります。
今まで大恐慌などのいくつもの危機を経験しながら、何とか資本主義を保ってきたのは、税制や金融投資の制限、さらには政府や中央銀行による市場への介入によって、純粋な資本主義にとっては不純物があったからこそだと考える学派です。
リーマンショックなど、様々な経済の問題を経験する過程では、不均衡動学派が優位になるのですが、それが過ぎてしまうと新古典派経済学が優位になるというのが現在の私たちの生活だと言えそうです。
経済のグローバル化は、古典派経済学の主張によって進められていった感があるもので、1980年代から経済の自由化を旗印として、多くの分野で規制緩和が進められ、あらゆるリスクを証券化したり、証券のリスクをさらに証券化していくような、どこまで自由化するのだという気がするほどに規制緩和が進んでいます。
あらゆる学問はこれで終わりということがないように、経済学も今現在でも進歩し続けている学問です。
そして、このグローバル化というのは、新古典派経済学の思想の壮大な実験という印象があります。
グローバル化による恩恵と弊害
強調しなければならないのは、グローバル化は資本主義の効率化を進めていくことで、様々な恩恵を私たちに与えてくれています。
その一つとして、1980年には世界の絶対的貧困率は40%を超えていたのですが、2015年には10%程度にまで減少しています。
世界の貧困が改善されたのは、とても素晴らしい成果ですよね。
しかし、新古典派経済学が考えていた、資本主義を純粋にしていけば、安定性と効率性の両方を実現できるということは、どうも難しいということがわかってきたようです。
効率性を高めれば高めるほど、安定性を失ってしまうということです。
リーマンショックのように、過去に類を見ないような大きな不安定さを見せるようになってきているのが現状です。
そのような状況になると、不均衡動学派が優位になり、国や中央銀行がなりふり構わない、というような状況で金融緩和を行ったり、減税を行ったりすることで、何とか均衡を保ちます。
しかしそれが終わると、また効率性を求める行動に移る。
それが今の現状になります。
ビットコインが基軸通貨になると
このような状況でビットコインのような仮想通貨が、貨幣となって流通するとどのようになってしまうのでしょうか?
仮想通貨は、国や中央銀行によって管理されるものではなく、仮想通貨の市場で取引している人たちの信用によって成り立つものです。
それはブロックチェーンという技術を使って、その取引が信用できるように工夫されいている状況です。
仮想通貨とは、数字を通貨として流通させるものですが、数字ですから簡単に偽造できてしまいます。
その偽造を防ぐためにブロックチェーンという技術を使い、二重払いや偽造が起こらないように工夫されています。
そして、仮想通貨を取引する人達によって、現在では仮想通貨が投機対象になってしまっているわけです。
新古典派経済学の効率性をさらに進めたような状況に、今の仮想通貨はなっているのですね。
そのビットコイン、仮想通貨が基軸通貨となり、効率性を求め続けた結果として、安定性を失って大恐慌のような状況になった場合、どのような結果になるのでしょうか?
仮想通貨が不安定になり、リーマンショックのような大恐慌が起こったときに、自己の利益を顧みることなく、市場に流動性を供給する中央銀行や、通貨の発行量をコントロールする国家というものが存在しません。
したがって、ビットコインのような仮想通貨が支配するような資本主義は、資本主義が持つ不安定性によって、滅びてしまう可能性がかなり高いのです。
まとめ
ビットコインのような仮想通貨が持つ不安定性により、貨幣としての機能を持つことは、今のところなさそうですね。
しかし、将来にわたって貨幣にならない、ということは断言できないのが現状になります。
資本主義が持つ不安定性を、さらに助長してしまうのではないか、と個人的には思っています。
仮想通貨投機についても少しお話しすると、私は、仮想通貨はどうにも理解できないため、お金をかける気にはまったくならないのですが、投機をしたいという場合は、仮想通貨をしっかりと理解することが大前提となると思います。