「ブロックチェーン・レボリューション」(ドン・タプスコット 著, アレックス・タプスコット 著)を読んだ感想
ブロックチェーンに注目が集まる理由とは
ブロックチェーンについては、かなり注目されている技術のため興味を持っています。
この本は「ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか」という副題があり、ブロックチェーンはビットコインを支える技術ですが、それにとどまらず、様々な分野に応用されるであろうことが書かれています。
ブロックチェーンによって、どのような世界になるのか、便利になるのか、逆に不便になるのか、ということに注目して読むことができます。
ブロックチェーンはネット上で使われる技術です。
今の私たちが生活している社会は、インターネットがなければ成り立たないほどにネットが浸透していますよね。
そこにあまり不便を感じないという方の方が多いのかもしれませんが、まだまだ便利にできると考えている方は少なくないようです。
また、私たちがあまり気が付いていなけれど、重大な問題があるということも指摘されています。
ひと握りの企業が大量のデータを所有し、それをもとにさらなるデータを手に入れ、自らの帝国を拡大している。
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これは、GAFAと呼ばれる巨大な企業のことを話しているのですが、確かに私たちはそのような大企業を利用するしか現在は選択肢がなく、様々なデータを企業に渡している状態ですね。
そして、そのような企業にはビッグデータと呼ばれるように、大量の個人情報がストックされている状態になり、ひとたび漏洩してしまえば、大変なことになってしまいます。
そのような状況であっても、やはり私たちはそれを利用するしか手段がありません。
これまでのインターネットは、大企業の力が強すぎた。大きくて複雑で不透明な企業が、その立場を利用して過剰な利益を手中に収める。
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また、インターネットでは匿名でいろんなことを発信できてしまうことから、様々な問題が起こっていますね。
ネット上の評価が下がっても痛くも痒くもないので、掲示板やSNSでは、釣りや荒らしが横行していた。でもこれからはいいことをすると得をして、悪いことをすると損になるようなインターネットが実現するだろう。
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このような問題のある現状を変えてしまう可能性があるのが、本書のテーマであるブロックチェーンであり、それがゆえにタイトルは「ブロックチェーンレボリューション」になっているのです。
ブロックチェーンの可能性
ブロックチェーンには、たくさんの可能性があると考えられているわけですが、なぜそのような期待を抱かせるのでしょうか?
ブロックチェーンは、参加者によってデータの正当性が証明されるようになっています。
一定のアルゴリズムにしたがって、何が正しいかをみんなで投票するというようなイメージですね。
投票者はたくさんいるわけですから、分散されている状況になり、発言権は投票者にあるため、悪意ある個人やグループが乗っ取ろうとしてもできないことになります。
これは単純な多数決のように感じますが、それでは悪意ある個人が多数を得るためにいろんな悪事を働く可能性があります。
そこでブロックチェーンは、発言権を得るために様々な工夫がなされています。
セキュリティとも言えますね。
例えば、ブロックチェーンが使われているビットコインでは、ビットコインの取引があると、その取引が正しいのかということを、参加者が証明するためマイナーと呼ばれる人たちが計算します。
この計算はかなり難しく、高性能のコンピューターが必要なようですが、その労力が見合うように正しいと証明した人には、ビットコインが与えられるようになっています。
このような機能を備えることで、正しさを証明するのが、絶対的な権力を持っている人や企業ではなく、参加者であるということがブロックチェーンの大きな特徴になるわけです。
ブロックチェーンの主な特徴は、まず分散されていること。中心となるデータベースが存在しないので乗っ取ろうとしても無駄だ。
もう一つ大事な特徴はパブリックであること。
さらにブロックチェーンには暗号技術を利用した高度なセキュリティが備わっている。
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このブロックチェーンの特徴によって、今現在のインターネットのように巨大な企業による仲介を経ることなく、自由に価値を創造し、また交換することが可能になるということです。
ネットワークによって、取引の正当性が証明されるということがブロックチェーンの特徴になりますので、それによって様々な仲介者を減らすことができれば、手数料などがかなり割安になっていくことが予想できますね。
最初に期待されているのは金融機関、特に海外への送金のようです。
海外への送金には、いろんな手続きが必要であり、それに伴って手数料も高くなっていきます。
しかし、ブロックチェーンを使えば、瞬時に送金できるようになり、仲介者もいないことから手数料もぐっと割安になります。
金融機関は、かなり焦っているのかもしれませんね。
ブロックチェーンの価値
ブロックチェーンは、金融で活用されることが期待されているわけですが、何も金融だけで利用できる技術ではありません。
ブロックチェーンの核にあるのは、何らかの所有権を確実に取引するという考え方です。その対象はお金でもモノでも、アイデアでもいい。大事なのは単に土地を記録することではなく、そこに関わる権利を記録して所有権が侵されないようにすることです。
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そして、それを可能にするにも関わらず、データーベースが存在しないということが重要です。
現在のインターネットでは、外企業が膨大なデータベースを保有しているわけですが、そこに様々な問題があります。
まず、漏洩させると一気に大量のデータが公開されてしまいます。
その結果個人情報が公にされ、様々な弊害が生まれてしまう可能性があるわけです。
また、ハッキングによって内容が変えられてしまうと、所有権などが侵害されてしまう可能性も出てきます。
そのために、データベースを守るため、企業はコストをかけて守っているわけですが、ブロックチェーンを使えば、データベース自体が存在しないため、そんなコストも不要になってしまいます。
ブロックチェーンでは、取引データの正しさをネットワークが保証するため、取引相手が信頼に足るかどうかもネットワークが証明します。
信頼できない相手は、ネットワークから排除されてしまうため、公平な取引が可能になるということです。
掲示板やSNSで根拠のない誹謗中傷などをアップしている状況も、ネットワークによる信頼が得られなくなってしまう状況になれば、きっと減っていくと思われます。
発展途上国での活用も期待
ブロックチェーンは様々な仲介者を排除してしまうことができるため、発展途上国への援助がスムーズに行えるというメリットも指摘されています。
発展途上国では、汚職や賄賂などが横行しているために、援助が必要な人になかな援助が届かないという状況があります。
しかし、仲介者がないブロックチェーンを使うことができれば、スムーズに援助を届けることができるのではないか、と期待されています。
また、大企業が仲介しないため、発展途上国に住む人たちが、簡単にインターネットを利用できる状況を生み出すことも可能ではないか、と考えらているようです。
まとめ
ブロックチェーンは、私たちの生活を大きく変えてくれる技術である可能性が高いですね。
しかし、中央が存在しないということはデメリットもある可能性があります。
ビットコインを見てみるとわかりますが、投機対象となっているため、価格が大きく上下するため、通貨としての機能は今の状況では期待できないと言われています。
国家や中央銀行の必要性をそこからは感じる事ができますね。
ブロックチェーンと中央の権力とのバランスをいかにとるか、ということが重要な分野もあるということですね。