一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書(山﨑 圭一 著)を読んだ感想
歴史から学んでいるか?
今の生活は新型コロナの影響で、以前とは一変しています。
自由に旅行や買い物などができていましたが、現在は自粛を強いられることが多くなっています。
そして、新型コロナウイルスの感染が世界中に広がっているため、連鎖的に企業の倒産や失業が増えている状況です。
経済活動が制限されているために、そのような状況が生まれるわけですが、当然実体経済も徐々に悪くなっていかざるを得ないです。
私たちができることは、新型コロナウイルスに感染しないこと、不必要に出歩いたりしてウイルスを拡散しないことなど、限られたことしかできないわけですが、それでもできることをやることで今後につながります。
そして、今は歴史を学ぶ時なのかもしれない、とも思っています。
それはどういうことなのかというと、歴史的にはいろんな危機が起こっても、また経済が崩壊してしまっても、必ず復活してきたから今の世界があるわけで、過去の危機からいかに学ぶかということがとても重要だからです。
こう話しているのは、世界的に有名な投資家であるジム・ロジャーズ氏です。
とりわけ実際に危機が起きた際にこそ、過去の歴史から学ぶことが大事だ。投資をしていると、何かが変化していることが分かる。問題は、ほとんどの人が過去の歴史をきちんと見ていないことだ。歴史を振り返れば、今起きていることが何であるかが、きっと見えてくることだろう
(ジム・ロジャーズ)
歴史をしっかりと学び、活かしていくことが、ジム・ロジャーズ氏の驚異的なパフォーマンスの裏付けになっているようです。
また、アメリカの有名な作家であるマーク・トウェインもこう語っています。
歴史は同じようには繰り返さないが、韻(いん)を踏む
同じ人が全く同じ経験をするわけではないですから、歴史が全く同じことを繰り返すことはないわけですが、同じ人間が行うことですから、似たような結果になることが多いということですね。
ですから、歴史をしっかりと学ぶことは、人生においてかなり有利に働きそうです。
日本史がむずかしい
歴史を学ぶためには、やはり本を読むしかないのですが、どうしても苦手意識がある方が多いように感じます。
そういう私も日本史が得意かというとそうでもなく、特に近代になるとさっぱりわからないという感じでした。
その理由はいろいろありますが、高校などの授業で学ぶ内容について少々問題があるように感じています。
まず、高校では誰それが何をした、という本当に細かいことを教えられますが、全体としての流れがあまり教えられないですよね。
日本という国は、はい、今は室町地代、いや今は奈良時代、違う平安時代、というような感じで時代でバッサリと切り取られるようなものではなく、なぜそのようになったのかという一連の流れがあるはずです。
しかし、その歴史の流れを無視した感じで、政治について学んだり、経済について学んだり、社会の仕組みについて学んだりするために、その流れをつかむことができない人が多いのです。
そのように言っている私もその一人です。
歴史はまず流れがあることを理解して、その流れをつかむことが重要であり、年号を覚えたり、人物の名前を覚えたりすることはその後で十分だと思います。
また、流れをつかんだ後の方が、そのような暗記しなければならないことも効果的に暗記することができます。
流れをつかんでいることで、なぜその人がそのようなことを行ったのか、ということが理解しやすいため、覚えることも比較的容易になるわけです。
そのような本を探す中で、本書に出会ったのです。
歴史の流れが理解しやすい
著者である山﨑さんは、公立高校教師でかつYouTuberの方です。
(YouTuberとしての肩書は、Historia Mundi先生です。)
YouTubeにはたくさん動画が上がっていますので、参考にされるのもよいのではないでしょうか。
動画は地理や世界史が中心になっているようですが、日本についても当然話されているものがたくさんあります。
動画の数はものすごい数のため、すべてを見ることはできませんでしたが私もいくつか拝見してとても楽しい動画でした。
公立高校の教師ですので、教えるプロということになるわけですが、やはりこの本もとても分かりやすく書かれています。
山﨑さんは次のように指摘しています。
中学校の教科書は「簡潔すぎ」、高校の教科書は「細かすぎ」なのです。
(18ページ)
私もこの印象が強くあります。
そのようなことを踏まえてか、本書の特徴は、天皇や将軍、内閣総理大臣などの政権担当者を主役として、日本史をストーリーとして理解できるように構成されています。
ストーリを学ぶために、年号や文化史を切り捨てているために、簡単に日本の歴史の流れをつかむことができます。
私は、この年号と文化史を切り捨てるということは、とても勇気が必要だったのではないかと思いますが、素晴らしい発想だと感じます。
高校の教科書は、じつは、時代区分ごとに「政治」「社会」「経済」「文化」のコーナーに分かれ、”行きつ戻りつ”記述されているのです。
(20ページ)
当然ですが、年号や文化史は非常に重要なものであり、学ぶべき知識なのですが、それを学ぼうとすると、どうしても歴史の流れをつかむことができない、という印象を受けるからです。
私の経験では、歴史を学んでいる中で、文化についての説明が入ってくると、どうもやる気をそがれてしまっていました。
それは、そこで全く関係ない知識を学んでいるような気がしたからです。
教科書は通常、政権の中枢にいる人物を描いているものですが、途中で文化史の説明が入ってくるため時代の流れもめちゃめちゃになってしまいますよね。
なぜかというと、政治史を学んでいれば、当然年代が進んでいくことになりますが、その途中で文化史が入ってくると、時代背景が逆戻りしてしまうからです。
簡単に言えば、江戸時代を学び始めて江戸中期まで学んだあとに、そこで江戸時代の文化を学んだとすると、それは江戸時代初期にまで戻ってしまうため、非常にわかりづらいんですよね。
ですから、まずは本書のように政権担当者を主役に展開していくだけ、にした方が時代背景をしっかりとつかむことができるわけです。
また、著者の山﨑さんは、文化史についても書く予定だということですので、そちらも楽しみにしたいです。
政治史と文化史、そして年号を別々に学んだ方が、最終的にはたくさんの知識を正しい流れの中で理解することができる、と私は考えており、その意味でこの本は秀逸でしたね。
歴史を学ぶ意味を考える
さて、私たちは歴史を学ぶ必要性があるのですが、それはなぜかというと、冒頭でお話しした通り、今の私たちの生活に活かすためにですよね。
そこで私が重要だと感じるのは、事件や出来事を覚えるだけでは不十分であり、「なぜ」その事件、出来事が起こったのか、ということを理解することだと考えています。
事件や出来事は、点でしかありませんが、理由を考えるということは「線」や「面」でとらえることだと思います。
その意味でも、本書であれば流れを理解しやすいため、出来事、事件の理由も同時に学ぶことができます。
まとめ
歴史を学ぶことは、私たちの生活をより豊かにしてくれるものだと思います。
しかし、苦手意識を持つ方が多いのも事実。
そんな中で、日本史の流れをつかむために、政権担当者を主役に展開される本書は、非常にわかりやすいと思います。
私たちの国の歴史ですから、やはり一番最初に学ばなければならない歴史ですよね。
ですから、本書のような入門的な本から始めるのが良いのではないかと思います。