偉大な投資家ジョン・テンプルトンの格言や投資法について
投資の格言
投資をしていると、次の格言に必ず出会うはずです。
強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく。
株価がどんどん上がっていく、いわゆる強気相場がどのように成長していくのか、ということが話されているわけですが、誰もが強気相場だと考えているのは、「楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」という段階になります。
ですから、本当に動き出すべきなのは、誰もが悲観している段階、つまり強気相場が始まっていない時期に動き出すべきだということですね。
この格言については、いろんな説があるようなのですが、アメリカで活躍された著名な投資家であるジョン・テンプルトンによるものだと言われています。
Bull markets are born on pessimism, grow on skepticism, mature on optimism and die on euphoria.
この言葉の日本語訳が先ほどの格言と言われています。
投資に関してはいろんな格言がありますが、同じような内容のものがたくさんあるだけであり、例えば
人の行く裏に道あり花の山
という有名な格言は、先ほどの格言を短くしただけ、という印象を受けます。
とはいえ、人の行く・・・という格言は、昔から日本の相場で使われてきた言葉なので、最初の格言とは関係ないと言えば関係ないですが、たどり着くところは同じということなのでしょう。
やはり投資で重要なことは、他の人が恐れて行動に移さないときに、最初に一歩を踏み出す必要があるのですね。
ジョン・テンプルトンの投資法
ジョン・テンプルトンはとても有名な投資家ですが、すでに亡くなっているため、その投資法については、書物などで探るしかありません。
しかし、幸いなことに彼について、たくさんの書物が発売されているため、その投資手法を探ることはそれほど難しいことではありません。
私の印象では、バリュー投資を徹底しているということです。
ウォーレン・バフェットは世界最高の投資家として有名ですが、その理論はベンジャミン・グレアムから学んだバリュー投資法が基本になっているそうです。
そしてジョン・テンプルトンも、ベンジャミン・グレアムから学んでいるようです。
彼の基本的な考え方をひと言で表せば次のようになる。
”時価が真の価格を下回っている会社をたくさんの市場の中から探し出せ”
(マネーマスターズ列伝 95ページ)
この中の彼とはジョン・テンプルトンのことです。
株価と発行株式数をかけ合わせて得られる時価が、その会社の真の価値よりも下回っているときにその銘柄を買うということですね。
これは簡単に言うと、その会社の真の価値が1000億円だとして、時価総額が500億円の場合、500億円でその会社を買収すれば1000億円の価値が手に入るということになります。
すごく単純な説明になりますし、真の価値が1000億円としても、その価値に届くまで何年もかかったり、もしかすると届かない、ということもあり得ます。
しかし、できるだけ割安の会社を探す、という基本姿勢を貫くことで、失敗のリスクを小さくすることを心がけるのがバリュー投資家です。
もちろんこのような数字で表れること以外にも、どのような経営者なのかや、成長率など様々な要素を総合的に判断していくわけですが、割安でなければそもそもその判断すら必要ないということです。
投資家に求められる能力とは
割安の銘柄を探すことができるということは、投資家にはどのような能力が求められるのでしょうか?
ジョン・テンプルトンは
投資家にとって一番大切な技術は、その時点ではまだ一般に認められていない価値を人より先に見分けられる能力である。
(マネーマスターズ列伝 96ページ)
と話しています。
時価総額がその企業の本当の価値よりも大幅に低いという場合は、その会社の魅力に誰も気が付いていない状態ですから、その価値を人より先に見つける能力が投資家には必要だということです。
割安な銘柄は世界中を探す
ジョン・テンプルトンの投資についての特徴として、海外への投資も制限せずに行っていたということでしょう。
彼は、素晴らしいバーゲンセールの銘柄を探すバリュー投資家として活躍していたわけですが、そのような銘柄を探すならばアメリカだけにこだわることなく、世界中の市場から銘柄を選んでいたようです。
彼は日本の株に投資をしていたことが有名なのですが、興味を持ち始めたのが1962年頃だと言います。
そのころに日本の株式市場に注目していた外国人投資家はそれほど多くはなく、株価も割安にとどまっていました。
彼がアメリカ市場だけに注目していれば、日本株に気が付くことはなかったわけですが、制限なく世界の株式市場を見ていたことで、日本株にも投資ができたわけです。
そこからの日本株は、ご存知のようにバブル期を迎える1990年初頭まで上がっていくことになり、彼の分析は正しかったということになります。
世界の市場を見るというのは、言葉で話すのは簡単なのですが、なかなか難しい側面がありますね。
探すことができる環境にあるのであれば、市場を制限することなく探すべきなのかもしれませんが、そうでない場合は無理をせずに理解できる市場だけを対象にすべきでしょう。
しかし、割安株を探す貪欲さ、ということは参考にしていくべきだと思っています。
待つことの重要性
他の偉大な投資家と変わらず、彼も待つことがとても重要である、ということは基本の考えとして持っているようです。
最初の格言の通り、相場が悲観な時に彼は投資を開始しますので、それまでは投資のチャンスはあまりないということになります。
このジョン・テンプルトンを大叔父に持つ、ローレン・C・テンプルトンは、ローレン・テンプルトン・キャピタル・マネジメントという投資の会社を経営されているようですが、相場が好調で投資先が見つからない場合などは、金融資産の3割を現金でもつそうです。
そして投資先が見つかるまでは、現金で持つことでいつでも行動できるように準備しているわけですね。
やはり投資で成功するためには、待つことができるかどうか、ということが一番重要な能力ということができそうです。
待つなんて簡単だ、と思うかもしれませんが、投資した経験がある方ならわかる感情に、常にポジションを持っておきたい、という気持ちがあります。
この銘柄を買っていない今、暴騰したらどうしようとか、いろんな感情が相まって常に何かに投資しておきたいという気持ちになってしまうものですが、そんな気持ちよりも割安なものが出てくるまで待つ、ということが一番大切な技術かもしれません。
まとめ
偉大な投資家というのは、いろんな投資手法を使って成功しているわけですが、基本となることは一つのような気がします。
それは本質的な価値をしっかりと見極めることです。
その価値を見抜くことができれば、それよりも安く放置されている投資先を探せばよいだけですから、その作業に集中することができます。
企業の数は本当に多いのですが、そのような有望な投資先を探すことは、苦痛どころか宝探しのように楽しめるのが、偉大な投資家に必要なもう一つの能力かもしれませんね。