「自分の脳に合った勉強法」(小沼勢矢 著)を読んだ感想
勉強法は人それぞれ?
本書のタイトルは「自分の脳に合った勉強法」なのですが、その横に10万人を見てわかった、という言葉があります。
10万人を見たということなので、脳の癖のようなものをとらえて、その人にあった勉強があるということが紹介されているのであろうと思い期待して読んでみました。
脳には特性があるというのは、個人個人で性格に違いがあるのと同じように、得意なことと不得意なことがあり、得意なところを使うような勉強法を使えばより効果が高くなるだろうという予想は誰でもできますね。
とはいえ私たちは自分の脳の特性というものは、はっきりと自覚しているものではないために、今一つ自分の得意とするところがわからないというのが現状です。
本書では、脳の特性のようなものを優勢分野という言い方をするようですが、その優勢分野をどう判別するかがまずは重要なことになります。
著者は、優勢分野を視覚・聴覚・触覚の3タイプに分類していて、自分がどのタイプなのか、ということが簡単に診断できるようになっています。
そして、診断テストの点数が40点以上のものを使うように説明されていて、そのための方法もいくつか紹介されています。
自分の脳の優勢分野を知るということは、勉強法を選ぶときにとても参考になる指標になるのは間違いないですよね。
本書の触れ込みでいうと、あなたの【記憶力】【集中力】【やる気】【思い出す力】が飛躍的に上がることが期待できます。
自分の優勢分野がわかったからと言って、絶対にそれが正しいというわけではなく、優勢分野は視覚だけど、どうも聞いて覚えた方が覚えやすい、ということも実際は起こると思います。
私はいつも心がけていることは、読書で得た知識は重要なものですが、その情報に自分を合わせなければいけないということはなく、参考になるところは取り入れ、そうでないところは捨ててしまって構わないということです。
ですから、視覚が優勢だから聴覚の勉強法を行ってはいけないということはなく、聴覚がしっくりくるならば、聴覚の勉強法を取り入れて全く問題ないと思います。
重要なことは、このような勉強法の本を読むことで、自分に合った勉強の方法を見つけることであり、そのためにはより多くの方法を知って、自分に合ったものを探すということが一番近道なのだということですね。
万人に共通のもの
私は万人に共通の勉強法というものはないと思っていますが、万人に効果がある、科学的に正しいと思われる方法はあります。
まず、人は思い出すことで記憶に定着させることができる、ということです。
これはインプットとアウトプットの関係になるのですが、詳細はこちらを参考にしていただければと思います。
このような科学的に正しいと思われる方法は、どのような勉強法でも取り入れていくということが重要ですが、これを踏まえたうえで如何にインプットするか、如何にアウトプットするか、というような部分は比較的選択肢がたくさんありますね。
ですから、そのような融通が利くような部分に自分に合った方法を取り入れる、ということで、効果を最大限にすることができるというわけです。
苦手科目はなぜできる?
いろんな勉強法がある中で、如何に苦手科目、苦手意識を解決するかという問題があります。
苦手なものは切り捨ててしまう、というのも一つの方法ですが、それができない場面も人生の中ではたくさんあります。
一番簡単にわかるのは試験ですよね。
資格試験、入学試験、その他試験にはたくさんの科目があって、当然得意科目、不得意科目というものがあるはずです。
苦手科目を得意科目でカバーするという考えもありますが、苦手科目が克服できれば、それが一番効果的と言えば効果的です。
苦手科目ができてしまう要因、それは「他者からの批判や評価といったフィードバックにより生まれる」といったことがほとんどです。
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例えば、親が数学が苦手だっという話を子供が聞いていた場合、それを子供が真に受けて自分も数学が苦手だと考えてしまうと、本当に数学が苦手になってしまうということがあります。
親が苦手だから自分も数学が苦手なのは仕方がない、というような考えを持ってしまい、さらにその状況、つまり数学が苦手なのが正しい姿なのだ、というような思考になってしまうこともあります。
他にもいろんな状況は考えられますよね。
学校で読んだ作文をみんなに笑われた、英語の発音をネイティブっぽく発音したらからかわれた、というように苦手意識は、他人からのフィードバックによることが多いわけです。
苦手科目を克服するには?
苦手科目を克服するためには、やみくもに取り組んでも効果はあるかもしれませんが、苦手科目だけに苦痛が伴う可能性があります。
そうなると、やはり苦手なのだというような感覚になってしまうかもしれません。
そこで取り入れたいことは、なぜ苦手になってしまったのか、ということを把握することが最初の第一歩になるでしょう。
先ほどの数学の場合は、親の話を聞いていた、ということが原因となるため、親と自分とは違うというように考えを改めることが大切です。
苦手科目の原因というのは、これが正解というものがないことが多く、何が原因となっているかわからないことも多いでしょう。
しかし、これが苦手意識を作った原因だ、と自分が納得できれば、たとえ間違っていたとしてもそれでよいのです。
まずは、自分自身で納得できるということが大切です。
そして、苦手克服に取り組むわけですが、どこから始めるか、ということが重要になります。
すでに苦手科目がある人は、どのような対策を講じていけばよいのでしょうか?ここでのポイントは「理解できるところまで戻る」ことです。
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わからないところまで戻るということは、簡単なようで意外と難しいことですよね。
しかし、そこまで戻らないと、苦手科目は克服できないです。
また数学で考えると、例えば高校の数学が理解できない場合、さかのぼってどの学年の数学ならばわかるかを明確にしなければなりません。
小学校3年までならわかる、ということなら小学4年からもう一度始める必要があります。
どんな科目でも同じことで、司法試験などの難しい試験でもどこで躓いているのか、ということを明確にしないと、いくら勉強しても頭に入ってきません。
苦手科目はやる気がしない
苦手科目は、苦手なのですから当然誰もやる気が起きないはずです。
さあ苦手科目だ、気合が入るぜ、という人はほぼ皆無でしょう。
苦手科目でどうモチベーションを高くすればよいのか、というと嫌でも始めてしまうという方法以外にありません。
「作業興奮」とは、ある物事にまずは取り組むことで、次第に集中力が高まってくるという心理効果。
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とにかく始めてしまうと、いつの間にか集中力が高まっていき、苦手科目でも勉強に身が入るということです。
作業興奮は、勉強だけに働く効果ではなく、ジョギングやランニングを行うときにも働きます。
どんなことでも、決めたことはまず始めてみるということが重要なわけです。
まとめ
自分の脳に合った勉強法というタイトルは、いささか刺激的な感じがしますよね。
脳に合った勉強法を行えば、すらすらとなんでも記憶できたりするような印象を持つ方もいるかもしれません。
そんな効果を望んでいる方は、残念ながらこの本は期待には沿えません。
しかし、できるだけ無駄な努力はしないで努力したい、という方にはきっと得られるものがあると思いますよ。