地中海食、オリーブオイル、ナッツ類とアンチエイジングとの関係
地中海食のアンチエイジングの効果は?
世界的に長寿の地方には、それを裏付ける食生活があるようです。
地中海にある地域に住んでいる方は、総じて長寿であることが有名です。
そのため、その地方の食生活である地中海食について、かなり研究が進んでいます。
ここでは、その地中海食について検討してみましょう。
地中海食は、その名のように地中海沿岸の諸国で食べられている伝統的な料理の総称です。
まず、2013年の『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』誌に掲載された地中海食の臨床研究を検討してみることにします。
この研究の対象となったのは、スペインに住む心血管疾患リスクのある55~80歳の男女7500名あまり(女性が57%)です。
対象は、A・Bいずれかの該当者が選ばれました。
Aは、糖尿病。
Bは、以下の6条件のうち、少なくとも3つを満たす人たち。
- 喫煙者
- 高血圧
- 悪玉コレステロール(LDLコレステロール)値が高い
- 善玉コレステロール(HDLコレステロール)値が低い
- 過体重あるいは肥満,
- 家族に心筋梗塞(心臓の血管が詰まって起こる病気)を比較的若いうちに起こした
- 人がいる。
選ばれた7500人を、ランダムに以下の3つのグループに分けました。
- 地中海食を毎日食べ、1日に50mlのエクストラ・バージン・オリーブオイルを摂取するグループ
- 地中海食を毎日食べ、1日に30gのミックス・ナッツ(クルミ15g、アーモンド7.5g、ヘーゼルナッツ7.5g)を摂取するグループ
- 脂肪の摂取はできるだけ避け、地中海食以外の食事を毎日食べるグループ
このように振り分け、約5年間にわたって追跡調査が行われました。
研究の期間がかなり長いので、その結果は信ぴょう性が高いと思われます。
ちなみに、研究はそもそも体重の減量が目的ではなかったため、1日の制限はありませんし、体重の変化も調べていません。
この研究の主眼は、脳卒中、心筋梗塞、そのどちらかによる死亡に関するデータです。
どの食事法で、この3つがたくさん現れるかを調査しています。
3つの結果のどれか1つ発生した割合は、1と2の地中海食群でほぼ同等でしたが、3の普通の食事群と比較すると30%も少なかったのです。
特に脳卒中の発症割合がいずれかの地中海食群では、普通の食事群と比較して4割前後、抑えられていました。
コレステロールを下げる薬の予防効果と同等、ないしはそれ以上の結果です。
薬ではなく食生活を変えるだけで、すばらしい健康効果をもたらすことができるということが、研究結果として示されたのです。
このような見方をすれば、 地中海食は寿命を延ばす料理といってもよく、またアンチエイジングや美容にも効果があると言ってもよさそうです。
地中海食が優れている6つの理由
それではなぜ、地中海食によってこのようなすばらしい健康効果が得られるのでし ょうか。
地中海食が優れている理由には、いくつもの要因が関わっています。
- 野菜、豆類、イモ類の摂取が多く、それらの植物性食品に含まれる食物繊維やビタミン、抗酸化物質の摂取が多い点
- オリーブオイルの効能
脂肪酸には、常温で固まる性質のある飽和脂肪酸と、常温で固まりにくい不飽和脂肪酸があります。
不飽和脂肪酸は、さらに炭素原子の結合の形から、炭素の二重結合 が1つの一価不飽和脂肪酸と、二重結合が2つ以上ある多価不飽和脂肪酸に分かれます。
オリーブオイルは一価不飽和脂肪酸の1つで、オレイン酸と呼ばれるものです。
オリーブオイルに代表されるオレイン酸は酸化されにくく、ほかの油よりも長期の保存 が可能です。
- 魚を多く摂取することによる効能
炭素の二重結合が2つ以上ある脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸に分類されます。
さらに、多価不飽和脂肪酸はサフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、コーン油などに代表されるn-6系脂肪酸と、イワシ、サバ、マグロ、ブリなどに多く含まれるn-3系脂肪酸に分けられます。
地中海食で摂取されるイワシ、サバなどのn-3系脂肪酸には、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)が多く含まれています。
DHAやEPAはいずれも人の体内では合成できないので、必須脂肪酸と呼ばれています。
近年、n-6系脂肪酸の過剰摂取は炎症やアレルギー反応を促進する可能性があり、摂り過ぎには注意が必要といわれるようになってきました。
逆にn-3系脂肪酸は、 n-6系脂肪酸の過剰摂取による反応を抑える働きがあります。
そのため、n-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸の比は1:1から1:4が望ましいとされています。
しかし、典型的な西洋食での比は1:10から1:30のあいだです。
日本人は西洋人より多く魚を摂取しますが、それ以上にn-6系脂肪酸を多く含む食品を摂取しており、注意が必要です。
少なくとも週に2回は魚料理を主食として摂るべきかもしれません。
JELISという日本の研究チームによるランダム化臨床試験(客観的に治療効果を評価することを目的とした研究)によると、EPAを加えることで、加えなかった場合より38%も心筋梗塞などの冠動脈疾患が少なくなったという報告もあります。
- ナッツの効能
ナッツは不飽和脂肪酸、食物繊維、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質などを含んでおり、ナッツの摂取量が多いほど心血管疾患や2型糖尿病などの慢性疾患リスクを減らすとされてきました。
2013年に「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に発表され たハーバード大学の大規模な研究の解析結果によれば、ナッツの摂取頻度が高いほど、すべての死因による死亡、ガンによる死亡、心血管疾患による死亡、呼吸器系疾患による死亡のリスクが低いという調査結果も出ています。
- 地中海食では家族が食卓を囲み、会話を楽しみながらゆっくりと食べます。
これも重要な要素です。
会話を楽しみながら、時間をかけてゆっくり食べると、それに応じて食べられた食物の消化吸収もゆっくりしたものになります。
つまり、血糖値の上昇をゆっくりさせることにつながるのです。
血糖値についてはこちらもご覧ください。
仕事に追われているサラリーマンのように、3分で丼物をかき込むなどといった食事のスタイルは血糖値の急上昇を招き、健康にいいわけがありません。
いくら忙しいとはいえ、食事の時間は30分程度をとりたいものです。
それに対して地中海食は、 忙しい日本人サラリーマンの食事スタイルとは好対照をなしています。
こうしたさまざまな条件が重なって、地中海食の優れた健康効果を生み出していると考えられます。
エクストラ・バージン・オリーブオイル、ナッツ類
地中海では、エクストラ・バージン・オリーブオイルの使用量を意識的に多くするといいでしょう。
消費の目安は1週間で1リットルです。
エクストラ・バージン・オリーブオイルはオリーブを圧搾しただけで、何も添加していません。
また、製造の過程で高温で熱することもありません。
エクストラ・バージン・オリーブオイルの正しい選び方はこちらを参考にしてください。
植物性でトランス脂肪酸が入っていないオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)ですから、基本的に多く摂ってもコレステロール値を上昇させることはありません。
そのため、 パスタを作るときも、パンを食べるときも、これを使う地中海食は、とてもヘルシーな食事になるのですね。
また、地中海食に使われるナッツ類はクルミ、ヘーゼルナッツ、アーモンドなどがあります。
1日1つまみの ナッツ(週に30gくらい)を食べるのがちょうどいいと思います。
ただし、家族の中 にナッツ・アレルギーの人がいる場合には、仮に本人が食べていなくとも避けるようにしてください。
家にナッツ類を置くことはやめましょう。
オリーブオイルやナッツ類は脂質をたくさん含んでいるため、太るのではないかと心配される方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、オイルやナッツのエネルギーだけを見ると太ってしまいそうですが、科学的調査により、オリーブオイルとナッツを適度に食べても体重が増えないことはわかっています。
むしろ減る可能性さえあるのです。
まとめ
地中海食がアンチエイジングに効果がありそうなのは、納得できたのではないでしょうか?
私たちは日本人なので、すべてを地中海食にすることは不可能です。
そこで、取り入れられるところを、無理のない範囲で取り入れていくという考え方でよいのではないかと思います。