物忘れが多くなった。お肉を食べていますか?脳に効果のあるアラキドン酸について。
物忘れが多くなった
私たちの脳も、身体の一部ですから老化が進んでいくのですが、それが目に見えてわかるものではないので、気が付かない場合が多いようです。
老化に気が付くのは、なんとなく物忘れが多くなったとか、新しいことに挑戦する意欲が少なくなってきた、そういった感じで気が付くことが多いですね。
加齢とともに物や人の名前をど忘れしてしまい、「あれ」とか「あの人」というようなことが多くなってくるのは、やはり老化の一つのようです。
この状態を健忘というのだそうですが、できればこのような状況は避けたいものです。
ちなみにこの健忘は、男女ともに40代から現れてくることが、いろんな研究で分かってはいるのですが、その原因についての詳細は未だわかっていないのが現状のようです。
健忘の原因(仮説)
有力な仮説としては、脳の神経細胞間の情報伝達能力の低下が関係していると言われています。
記憶を脳から引き出すためには、この神経細胞間のやり取りが上手にできていることが前提です。
ですから、神経細胞間の情報伝達がうまくいかなくなると、記憶が上手に引き出せなくなってしまいますので、健忘が起こるのは納得できますね。
脳の神経細胞間の情報伝達能力の低下は、老化の一つですので、脳のアンチエイジングを行うことで、この健忘を改善することは可能だと言われています。
運動
脳のアンチエイジングには、やはり運動がとても良い効果があります。
アメリカピッツバーグ大学の研究が、脳と運動の関係について報告しています。
その実験では、認知症ではない299名の方の1日の歩行距離を調査したところ1週間に9km~14km(1日平均1.3km~2km)歩いている人は歩いていない人に比べて脳の萎縮の割合が少ないということを報告しています。
特に短期記憶に関係している海馬という部分は筋肉と同じように運動によって大きくなることが、この実験以外でも様々な報告があります。
記憶に関して特に効果があると言われているのは有酸素運動です。
記憶力の良さを競う大会、しかも世界大会まであるのですが、記憶力世界一に輝いた人の記憶力を鍛えるためのトレーニングの半分は、なんと有酸素運動だという話もあります。
しかし、有酸素運動でなければ効果がない、というわけではありませんので、筋トレなどに取り組むこともとても有効ですよ。
脳トレはあまり効果がない
一般的に脳トレというと、ゲームやパズルなどを解くようなものではないでしょうか?
こちらに関しても、イギリスのロンドン大学の研究報告があります。
脳トレによってゲームやパズルを解くスピードは速くなるのですが、脳の活性化にはつながらなかったということです。
アラキドン酸
そして、食べ物として注目されているのが、脳の働きを若返らせると言われているアラキドン酸です。
卵やレバー、肉類に多く含まれる脂肪酸です。
また、リノール酸などを体内でアラキドン酸に変えることでも、アラキドン酸を摂取することができます。
このアラキドン酸は、魚にたくさん含まれている『DHA』や『EPA』と同じ、不飽和脂肪酸の一つです。
少し詳しく見てみると、DHAやEPAがn-3系、一般的にはオメガ3脂肪酸と呼ばれているのに対し、アラキドン酸はn-6系、一般的にオメガ6脂肪酸と呼ばれる不飽和脂肪酸に属しています。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の違いは、不飽和脂肪酸の構造の違いによるものですが、両方とも脳の健康維持に欠かせません。
そしてアラキドン酸は、脳の神経細胞をはじめとする細胞膜の構成成分のひとつであり、ホルモンの合成原料のひとつでもありますので、とても重要な脂肪酸なのです。
しかし残念なことにアラキドン酸は、加齢とともに減少してしまう必須脂肪酸です。
そのため、食べ物から摂取することがとても重要になります。
アラキドン酸を多く含む食品(100g中)は次のリストを参考にしてみてください。
- 豚レバー 301mg
- 牛レバー 166mg
- 鶏ハツ 151mg
- 豚バラ肉 109mg
- 鶏もも肉 76mg
- 卵(卵黄) 431mg
食品でアラキドン酸を摂る場合は、1日200mgの摂取を目安にすることが推奨されています。
レバーが苦手な人も多いと思いますが、その場合は牛肉でも摂取できます。
また、当然豚肉からも摂取することは可能です。
この表を見るとわかると思いますが、アラキドン酸は比較的簡単に摂取できるのがわかると思います。
そして、アラキドン酸は酸化しやすいと言われていますので、抗酸化作用のある緑黄色野菜や果物などもしっかりと摂るように心がける必要があります。
肉だけ食べていては老化が進んでしまう可能性があるわけですね。
アラキドン酸の研究について
アラキドン酸の脳への効果についての研究がいくつかあります。
その研究では、男性20人に、アラキドン酸を1ヵ月以上摂取してもらい、摂取する前と後で、脳の情報処理の速さを比較実験したそうです。
すると、脳年齢が7.6歳若返ったという結果になったという報告が出されています。
ここまで劇的な変化は、誰にでもあるものではないかもしれませんが、アラキドン酸の効果はかなり高いことがわかります。
アラキドン酸の効果について
では、具体的にはどのような効果があるのでしょうか?
アラキドン酸には、記憶力を向上させる効果があるとされているのは、先ほどの実験からも分かったと思います。
アラキドン酸は、脳の神経細胞の主要成分であるということが理由になります。
私たちの脳は、成長していくにつれて細胞が死滅して減っていくだけであると考えられていました。
そのため以前は、人間の脳の神経細胞は、3歳までがピークと考えられていたのです。
ところが最近になって、大人になっても脳内で神経新生が起こっていることが徐々に明らかになってきました。
そして神経の新生に関わるだけではなく、アラキドン酸は細胞膜を柔らかくする働きがあるといわれています。
研究によって神経細胞間で伝達物質の放出が起こるときには、細胞膜が柔らかい方がスムーズに情報が伝達されることが報告されています。
これらの効果によって、アラキドン酸は脳にとても良い効果をもたらすことが期待されます。
健忘などの物忘れに効くというのは、この効果によるものなのですね。
アラキドン酸の不足
アラキドン酸は、普通の食事をしている場合には不足することは、あまり考えられない成分です。
食生活が欧米化していることもあり、私たちのアラキドン酸の摂取量は増える傾向にあります。
しかし、過剰なダイエットや健康のことを考えて肉などを食べない、という極端な食生活を送っている場合は、アラキドン酸の不足が起こる可能性があります。
このような場合には、アラキドン酸の不足も考えられます。
そうなると、脳の神経細胞間の伝達がうまくいかなくなるために、物忘れが増えてしまったり、日中に頭が働かないように感じたりすることがあります。
そして、脳の情報の伝達がうまくいかないということは、様々な病気につながる可能性があることは、簡単に想像できると思います。
また加齢とともにアラキドン酸は減ってしまうため、アンチエイジングを心がける場合には、アラキドン酸の摂取には注意が必要です。
年齢を重ねると、どうしても肉や魚などを避けるようになり、あっさりした蕎麦やうどんなどで済ませてしまうことが多くなります。
そのような食事は炭水化物中心になるため、アラキドン酸が不足してしまい、脳の働きが鈍くなってしまい、さらには脳の老化につながる可能性があります。
ですから、年齢を重ねてもある程度の肉類を食べる必要があるのかもしれませんね。
アラキドン酸の過剰摂取
アラキドン酸は、通常の食生活の場合は、不足することは通常考えられません。
食が欧米化している現在では、アラキドン酸の摂りすぎの方が問題になっています。
アラキドン酸は、脳にとても良い効果があるのですが摂りすぎは様々な悪影響があると言われています。
例えば、大腸ガンや前立腺ガン、皮膚ガン、動脈硬化、アレルギー性湿疹、アトピー性皮膚炎などの症状を引き起こすとされています。
こう考えると、アラキドン酸は多すぎてもダメであり、少なすぎてもダメという、なんとも厄介な脂肪酸ですね。
まとめ
年齢とともに味覚があっさりしたものを求めるようになります。
そのため、肉などをあまり食べなくなってしまう方が大勢いらっしゃいますね。
しかし、極端にアラキドン酸が減ってしまうと、記憶力などに影響が出てしまうことがあります。
物忘れが激しくなってきている場合は、食生活の見直しも必要な段階なのかもしれません。