過度なダイエットはアンチエイジングの敵 脂肪編
肥満と脂肪と老化の関係
敵にも味方にもなる悩ましい存在なのが脂肪なのですがご存知でしたか?
脂肪って意外にいいヤツだったというと驚かれるかもしれませんね。
現代社会は飽食の時代で、糖化しやすい社会になっている、というのは誰もが理解していることだと思います。
糖化の要因には食料の摂取の変化があり、以前と比べて脂肪の摂取割合が増えていると指摘されます。
「肥満は病気のおおもと」のようにいわれるためか、脂肪=悪者の扱いをされます。
やはり脂肪という言葉を聞いて、あまり良いイメージを持つ人はいないのではないでしょうか?
しかしながら、脂肪そのものは人の体にとって味方であることは、知っておいたほうが良いと思います。
もともと脂肪はどんな働きをしているのかというと、人間の体を守るための働きをしています。
たとえば、寒さから体を防ぐとか、座ったときのクッションの働きをしてくれます。
また、脂肪細胞がいろいろな物質を出すことによって感染から体を守ったり、出血を抑える働きもしています。
そして、脂肪は動脈硬化を防ぐような物質もつくっているのですよ。
これを聞くと、少し脂肪を見直しますよね。
脂肪って、私たちが想像する以上に頼もしい奴だということです。
悪役どころか、正義の味方といってもよいような存在なんです。
脂肪が少なすぎると、このような恩恵を受けることができなくなります。
とくにいえるのは、90歳とか100歳のような高齢者になってくると、脂肪が少ない人のほうが、いろいろな症状を発生しやすくなるということがあります。
脂肪が少なくて症状が発生するってイメージしづらいでしょうか?
でも今なら想像できるかもしれませんね。
症状を発生させてしまう理由としては、脂肪は酸化されやすい性質を持っているので、脂肪自身が酸化されることで、タンパク質やDNAが酸化して体が傷つく状態を防いでくれるのです。
いわば、脂肪は私たちの身代わりになってくれているのです。
脂肪が少ないということは、身代わりの脂肪が十分にいなくなるということですから、たとえば、DNAが酸化によって損傷してしまい、それががんの原因になることがあります。
がんのプロモーターといって、がんを起こしやすいところが刺激を受けたり、あるいはがん抑制遺伝子が損傷を受けて、抑制がほとんどできなくなってくると、がん細胞が増えてきます。
また、痩せている人の遺伝子がダイレクトに損傷すると、痩せていて脂肪が守ってくれないことで、確率的にがんに関係する部分がやられやすくなって、がん細胞が増えます。
つまり、がんについては小太りの人のほうが確率的に守られやすいということになります。
もちろん確率的な話であって、太っている人ががんに罹らないということではありませんし、脂肪が足りない人が必ずがんになるということでもありません。
しかし、常に悪者となりがちな脂肪の意外な一面をしらなければ、このようなリスクを背負ってしまう可能性もありますよね。
脂肪が多すぎるとどうなるか?
そんな頼もしい脂肪も、量が重要で、多すぎるといろんな弊害が出てきます。
脂肪に悪いイメージがあるのは、多すぎるときの働きのためです。
では、どのくらいの脂肪だと過剰なのでしょうか。
体脂肪率でいうと、一般的に30%を超えてくるといろいろな弊害が起こります。
肥満を見る場合には、 BMIと呼ばれる指標があって、次の式で指数を計算します。
BMI=体重(kg) ÷ (身長(m)×身長(m))
健康診断の結果表に明記されているので、ピンとくる人も多いのではないでしょうか。
BMI指数でいうと、適正体重は22のときに最も病気になりにくくなるといわれています。
この数字ピッタリでないといけないということは、もちろんありませんが、この数字に近いほうが良いでしょう。
ただ、BMI指数は低くても、肥満を疑われる人は少なくないのです。
肥満の人の体脂肪率、すなわち体脂肪量(kg) ÷ 体重(kg)×100は、だいたい30~50%になっている場合が多いようです。
体脂肪の大部分は脂肪ですから、それがよくありません。
なにがよくないのかというと、脂肪が多すぎると動脈硬化の促進要因にもなりかねない中性脂肪も多いので、そこから老化を早めるAGEs (糖化最終生成物)をつくり出すアルデヒドができてしまいます。
ちなみに、中性脂肪だけでなく、健康診断の検査項目の1つ、LDLコレステロール値が高いケースも要注意です。
LDLコレステロールは悪玉コレステロールといわれるもので、これからもアルデヒドができ、脂質異常症を招きます。
脂肪が多いということは、過剰に脂肪を摂っているからそうなるので、脂肪由来の糖化ストレスが強い状態かもしれません。
基本的に肥満が悪いのは、それが1つの理由です。
もう1つは、脂肪はアディポサイトカインという物質も10~20種類くらい出します。
このうち善玉とされているのがアディポネクチンといって、インスリンの働きを助けて動脈硬化を抑えます。
しかし、脂肪が溜まるとアディポネクチンが減ってインスリンの効きが悪くなり、食後高血糖 になりやすくなります。
こうなると心筋梗塞や脳卒中の引き金となる「血糖スパイク」も生じやすくなるのです。
血糖値を下げるインシュリンが効かなくなるため、血糖値が跳ね上がってしまうようになるわけです。
肥満になると、中性脂肪が多くて直接アルデヒドも出すし、血糖スパイクも起こしやすいというところが一番大きな問題で、万病のもとになるということです。
正義の味方もたくさん集まると、何をしでかすかわかりませんね。
無理なダイエットでリバウンドする一つの理由は脂肪
人間の脂肪細胞には、「白色脂肪細胞」と「褐色脂肪細」があります。
太ってくると褐色脂肪細胞が少なってきます。
また、褐色脂肪細胞は加齢やストレス、高血糖でも減っていくことがあります。
褐色脂肪細胞はまた、寒い地方の人に多く、男性よりも女性に多いという特徴があります。
褐色脂肪細胞はそれ自身が発熱するので、褐色脂肪細胞が多ければ寒さにも強くなり、子供を産む機能を持つ女性を守っていると考えられています。
ところが、女性が極端なダイエットをすると、この褐色脂肪細胞は減ってしまいます。(もちろん男性も同じですが)
褐色脂肪細胞は発熱するので、褐色脂肪細胞が多くあったほうが基礎代謝が高くなります。
褐色脂肪細胞が減ってしまうということは、基礎代謝が下がってしまうことになり、結果として太りやすく、またリバウンドしやすくなるということです。
なぜ褐色脂肪細胞が減ってしまうのかというと、無理なダイエットで痩せようとすると、人の体は「安静時にエネルギーを使って熱を出していては、きっと環境がきびしくなる時代に生き残れない」と判断するからです。
そして褐色脂肪細胞を減らそうとするために、基礎代謝が低くなります。
これがリバウンドしてしまう理由です。
この作用は、男性よりも女性に強く表われます。褐色脂肪細胞を多く持っているのは女性ですから。
かといって、肥満で脂肪細胞の中に脂肪が溜まりすぎてしまうと、動脈硬化を防ぐサイトカインというタンパク質も減ってしまいますし、体に悪さをして炎症や血栓をつくりやすくするといった問題を起こします。
結局、「太りすぎず、痩せすぎず、バランスをとることが大事」ということです。
まとめ
脂肪は、味方につけるとこれほど頼もしいものはありません。
しかし、ひとたび悪役になると、あらゆる攻撃を仕掛けてくるようです。
アンチエイジングを効果的にして、老化を防ぐためには、脂肪といかに上手に付き合うかということが、本当に重要なのですね。