アンチエイジングには腸内環境が重要 玄米食が腸内環境に与える効果
痩せたい人に朗報、腸内の善玉菌のすごい役割
腸脳相関に関しては、以前にお話ししました。
今回は腸脳相関の中でも、善玉菌に関することから始めたいと思います。
善玉菌には乳酸菌やビフィズス菌、フィーカリ菌やプレビウス菌といったものがあります。
これら善玉菌の役割の中の一つは以下の4つの酸を作ることです。
- 乳酸
- 酢酸
- 酪酸
- プロピオン酸
ビフィズス菌は「酢酸」と「乳酸」をつくる菌で、人間にとって最大の味方です。
乳酸菌は文字どおり「乳酸」を、フィーカリ菌やクロストリジウム・ブチリカムは「酪酸」をつくります。
そして、腸内に多く存在するバクテロイデス菌は「プロピオン酸」をつくります。
これら4つの酸は短鎖脂肪酸と言われるものです。
ここ最近の研究によって、短鎖脂肪酸が人間の体にとって重要な働きをしていることがわかってきました。
まず、人のエネルギー代謝において短鎖脂肪酸が非常に大きな役割をはたしています。
私たちは食事でさまざまなものを食べます。
ごはん、味噌汁、肉、魚、どんなものでも、食道→胃→小腸を通って大腸にいきます。
そして、大腸の中で善玉菌が短鎖脂肪酸をどれだけつくるかによって、だいたいどれくらいエネル ギーを摂取したかわかるようなシステムになっているのです。
善玉菌がたくさん短鎖脂肪酸を作るのは、たくさん食物を食べたときです。
逆に善玉菌が短鎖脂肪酸をたくさんつくれば、食料をたくさん摂取したことを体が認識し、エネル ギー代謝が活発になります。
しかし、いくら食べても善玉菌がいない場合はどうでしょうか?
食物を食べても、善玉菌がいないため、腸内で酢酸、酪酸、乳酸ができません。
その結果、体は「あぁ食べてないんだな」と認識してしまい、エネルギー代謝の活性が上がりません。
その結果、たくさん食べてしまって太ってしまうわけです。
つまり、腸内の善玉菌によって、食べた情報、エネルギー情報が身体に伝わるシステムが私たちの身体の中にはあるのです。
そこから伝わる情報によって、心拍数が上がったり、体温が上昇したり、基礎代謝が上がったりという調節ができるのです。
このため、腸内に善玉菌がたくさんいれば、肥満を防ぐことができるというわけです。
逆もしかり、善玉菌がいなければ、太りやすくなってしまいます。
なぜ中年になると人は太りやすくなるのか?
加齢に伴い、筋肉量や褐色脂肪細胞が減る影響についてはすでに解説しています。
それにプラスして、脂肪細胞が仲間を呼びやすくなるという性質があります。
脂肪細胞どうもさみしがりやのようで、自分の仲間を探したがるのです。
自分の仲間を探すために、人間が運動するのをやめさせて怠けさせ、どんどん脂肪細胞が増えるようなことをします。
この状態が高脂肪依存症状です。
脂肪細胞が脂肪細胞を呼んで、ますます動物性脂肪を食べたくなるようなものです。
さらにスナック菓子やチョコレートといった、特定の食品を過剰に食べたくなってしまう食物依存症になったりストレス太りをするリスクも高まります。
なぜ高脂肪依存症状になるのか
ではなぜ、脂肪細胞は自分の仲間を探したがるのか。
原因の一つは腸脳相関が原因です。
脳の視床下部にメタボ報酬系という、食べものと密接に関係している組織があります。
私たち人は、おいしいものを食べると「嬉しい!」と感じるように、食事を生命維持以外の目的で行うことができます。
そこでこの嬉しいという快感を報酬として体を活性化させ、いろいろな基礎代謝に影響します。
そのメタボ報酬系による欲求で食べたものが悪さをするのです。
その悪さというのはいったいどのようなことなのでしょうか?
それは、動物性脂肪ばかりを食べることによって、メタボ報酬系の細胞にERストレス (小胞体ストレス : Endoplasmic reticulum stress)という負荷がかかり、細胞の負担になってしまうことが原因です。
肉などばかり食べてしまうことで、メタボリック・ハンガー調節系の機能を麻痺させ、私たちの身体にとって必要な摂取カロリーを脳が正しく判断出来ない状態になってしまうのです。
メタボリック・ハンガー調節系とは、簡単に言うと生命維持のために食事をするということを調節するものです。
お腹がすけば食べる、すかなければ食べないということを調節しているところと考えるとわかりやすいでしょうか?
そのメタボリック・ハンバー調節系が麻痺している状態は、脳があたかもハッキングを受けて、動物性脂肪を過剰に求めるような状態です。
すると運動をしたくなくなります。
ER(小胞体)は細胞内に入ってきた古いタンパク質を分解するところです。
そこにたくさんの脂肪が入ってくると、タンパク質を分解しきれなくなって負担になります。
それがERストレスです。
分解しても分解してもしきれないタンパク質があるのですから、残業続きのような状態になる、ということをイメージすればわかりやすいでしょう。
また、ストレスによってERは動物性脂肪がさらに好きになるという悪さもします。
ですから肉などの脂肪分を食べれば食べるほど、ERストレスによって動物性脂肪が好きになります。
この悪循環の状態が高脂肪食依存症です。
最近の研究によって、ギャンブル依存症や薬物依存などと同じように、動物性脂肪にもこのように依存性があることがわかってきています。
高脂肪食依存症の特徴は次のようなものです。
- フライなどの脂の多い物を食べたい。
- 肉などの動物性脂肪をたくさん含んだものを食べたい。
- 運動したくなくなる。
ラットでもマウスでも動物性脂肪だけで育てると、動物性脂肪の多い餌ばかりを好んで食べるようになります。
加えてそのネズミは怠け者になります。
高脂肪食依存症のネズミが、運動したくなくなっている状態です。
回し車のような遊び場をつくってあげても、まるで回転数が上がりません。
若い頃であれば筋肉量や褐色脂肪細胞がそれなりにあるので、ERストレスを抱えても「即・ 肥満」という状態になりづらいです。
中高年になるとERストレスに対する、抵抗力が弱いので、いわゆる中年太りになりやすいのです。
今までの説明は少し難しいかもしれませんが、要は腸脳関係によって、脳は食べ物から影響を受け、それによって、身体に好ましくない行動をとってしまうことがある、ということです。
高動物性脂肪食によって、脳に影響があり、それによってさらに動物性脂肪を求めるようになってしまうと、人は肥満になってしまい、運動したくなくなるために、その負のスパイラルから抜け出すことが困難になってしまうのです。
脂肪依存・運動嫌いを抜け出すためには?
腸脳相関をコントロールする方法があれば、ぜひ知りたいところですよね。
それは、玄米食にすることです。
白米は、ほぼデンプンで脂分をほとんど含んでいません。
お米の脂分はぬかの部分にあるからです。
玄米の胚芽の部分に含まれている脂である、γオリザノールという成分を摂ることで、脂肪依存や運動嫌いになるという情報を断ち切ってくれるという研究結果が報告されています。
脂肪食を投与して脂肪食が好きになった怠け者のマウスにγオリザオールを投与すると、まず脂肪依存、そして運動嫌いが断ち切れることがわかっています。
玄米の力はすごいですね。
しかし、玄米はよく噛まないと消化不良を起こしてしまうことがあります。
消化不良を起こすと、腸内の異常発酵が起こってしまい、悪玉菌が増えることがあります。
最初は、白米に1割程度の玄米を混ぜて食べるということから始めるのが無難でしょう。
慣れてくれば、玄米の量を増やしていけばよいのです。
自分好みの配合を考えてみるのもよいですね。
γオリザノールは、腸内の善玉菌を増やしてくれるのですが、消化不良で悪玉菌を増やしてしまっては、元も子もありませんから、無理のない範囲で進めていくことが大切です。
まとめ
腸内の善玉菌を増やすことは、アンチエイジングに効果的であり、かつダイエットにも効果的ということになります。
食生活や運動嫌いがなかなか治らない、という方は腸内環境が乱れているせいかもしれません。
アンチエイジングを効果的に進めるために、一度自分の食生活を見直してみる必要があるかもしれませんね。