牛乳は健康に良い?悪い?
牛乳は飲むべきではない?
牛乳や乳製品には、どのようなイメージを持っていらっしゃるでしょうか?
カルシウムやたんぱく質がたくさん含まれているから健康に良い、というイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか。
しかし、最近では牛乳は健康に良くない、という研究結果も出てきていて、乳製品は摂るべきではないと考えている方も多いのではないでしょうか。
食材にありがちなこの両極端な意見の対立ですが、研究者にとっては実力を発揮する良いチャンスなのかもしれませんが、研究者ではない私たちはいつもこれに悩まされますね。
いったいどっちやねん!
これが正直な感想ではないかと思います。
牛乳などの乳製品についても、話は常に両極端で何を信じればよいのかわかりませんね。
乳製品は健康に悪い説
乳製品、特に牛乳が身体によくない理由として、乳製品を大人になってから摂るのは人間だけだということがあります。
確かに、牛乳は牛の赤ちゃんのためにあるものであり、大人になっても牛乳を飲んでいる牛はいません。
他の動物も同じですよね。
人間も大人になってからも、母乳を飲んでいると周りからドン引きされてしまうでしょう。
つまりはあらゆる乳製品は、赤ちゃん、少なくとも幼い子供のためにあるのであって、大人には必要がないということが挙げられます。
とはいえ、これだけでは説得力に乏しく、大人になっても乳製品を摂ることが、なぜ良くないのかの理由が全くありません。
そこで、様々な研究が引き合いに出されるわけです。
ここでは、『アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション』誌に掲載された2007年のメタ分析についてみてみることにしましょう。
この記事では、カルシウムの摂取と骨折の関係を調べた質の高い研究が検証されています。
この研究では、股関節骨折について中心に述べられているようです。
この研究では34歳から79歳の合計20万人以上のデータが分析され、その結果カルシウム総摂取量と骨折リスクに関連がないことがわかったのです。
さらにこの研究では、カルシウムの補給による骨折リスクの減少効果を調べたランダム化比較試験も検討されています。
これらの試験の被験者は6000人以上の中高年者で、被験者たちはカルシウム補給群とプラセボ群にランダムに分けられた。
プラセボ群はカルシウムと称して身体に害のない、カルシウムを含まないものが与えられたグループになります。
この試験の結果、カルシウムの補給によって骨折率が下がらなかったという結果とともに、なんと股関節骨折のリスクが増加した可能性があるという懸念が生じたというのです。
この研究は乳製品そのものの効果というよりは、乳製品に含まれる特定の栄養素に健康を守る効果があるかどうかを調べた研究になりますが、乳製品を摂るべき理由として、カルシウムを上げる場合が多いことへの反証として使われるようです。
乳製品が健康に良い説
乳製品を摂ることで健康に良いという報告も、一方でたくさんあるのが現実です。
例えば、乳製品を摂取することで糖尿病の予防効果が得られるという研究報告があります。
この研究の中では乳製品を1日2回以上摂取していると、高血圧と糖尿病のリスクが11〜12%低く、1日3回摂取していると13〜14%低かったという報告がなされています。
また、乳製品を摂ることで心血管の健康に良い影響を与えるという報告もあります。
この研究では、全乳製品の高摂取群は、摂取無し群と比し、全死亡率(3.4%対5.6%)、非心血管死亡率(2.5%対4%)、心血管死亡率(0.9%対1.6%)、主要心臓血管疾患(3.5%対4.9%)、脳卒中(1.2%対2.9%)が低かったと報告されています。
そしてこの2群間に、心筋梗塞(1.9%対1.6%)の差異は認められなかったとのことです。
結局どうすればよい?
このように乳製品については、いろんな説があって判断がつかないというのが正直な感想ではないでしょうか?
結論としては、乳製品は食べ過ぎなければ問題ない、ということになりそうです。
乳製品に限らず、すべての食材に共通しているのですが、健康への悪影響というのは偏った食材を食べ過ぎてしまうことにあるようです。
まず、カルシウムが不足していて、骨がもろくなっているような場合には、当然カルシウムが必要ですし、牛乳などの乳製品を摂ることは重要なことになってきます。
そして何よりも重要なことは、私たちは牛乳や乳製品を健康を促進するためだけに、我慢して摂っているというわけではない、ということです。
むしろ乳製品は私たちの喜びのために摂っていることの方が多いですよね。
例えば、スイーツを考えてみると、乳製品を使っていないものが考えられるでしょうか?
ヴィーガンの方のために、豆乳などを使って作られたスイーツもありますが、ヴィーガンではない場合は、わざわざ乳製品を使っていないものを選ぶ必要もありません。
スイーツを食べる喜びを、乳製品を避けるという理由で我慢する必要はないでしょう。
もちろん食べ過ぎはご法度ですが。
また、チーズはピザに必要ですし、パスタの上にかけて食べることも多いでしょう。
毎朝シリアルを食べるという場合は、牛乳以外にかけるものが思い浮かばないのではないでしょうか?
乳製品を食べる場合のほとんどは、それが好き、それがおいしいから食べているのだと思います。
また、ほ乳類の中で、大人になっても乳製品を食べるのは、人間だけだからやめるべきだということを主張する方もいらっしゃいますが、それも如何なものでしょうね。
食材に火を通して食事をするのは、ほ乳類の中でも人間だけだから、生のままですべての食材を食べるべきだ、とでも言うつもりでしょうか?
まとめ
様々な食材について共通することは、あらゆる研究報告があるなかで、一つの結論だけを取り上げて、それを日々の生活に取り入れていくというのは、少し乱暴なのかもしれません。
牛乳や乳製品の研究に関しても同じことが言え、今回取り上げた研究以外にも様々な報告があります。
健康に悪いと主張する論文、健康に良いとする論文が本当にたくさんあるために、どうすればよいのか、本当に悩んでしまいますね。
研究について考える場合には、様々な要素が私たちの生活には絡んでいるため、一つの食材だけの効果を考えることは非常に困難であるということです。
肉をたくさん食べる人を集めて観察してみると、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす確率が高いことが分かった、という研究があるとします。
しかし、その肉を好んだ人たちは、運動を全くしない傾向があったり、喫煙の習慣があったりというような要素がある場合は、その研究結果が正しいのか間違っているのかがわからないところがあります。
よほど確実な研究結果でない限り、極端にそれに従う必要はなく、食べ過ぎ飲みすぎに注意しながら、毎日の生活に取り入れていくということをすべきなのでしょう。
私が知る限りで、かなり確実な研究結果が出ているのは、トランス脂肪酸の健康への悪影響に関するものだけのような気がします。
とはいえ、トランス脂肪酸もそれほど健康に悪い物ではない、という研究結果も少ないですがあるのは事実です。
ですから、自分の身体に合わせて、食材をバランスよく摂ることが重要になり、牛乳についても同じことが言えそうです。
乳糖不耐症などで、牛乳などを摂ると下痢になる、という場合はもちろんとってはいけませんが、そうでないならおいしい乳製品を我慢する必要はなく、適量を摂ることを心がけるべきでしょう。