遺伝子とアンチエイジングについて
アンチエイジングは遺伝と関係があるのか?
「生涯を通じて、健康、体力、機能にもっとも影響するのは、かかりつけの医者でも薬でもなければ、手術をはじめとするさまざまな治療でもない。遺伝子の発現にかかわる食事と生活習慣の日々の積み重ねほど、大きな影響力を持つものはない。」
ジェフリー・ブランド
美しくて若々しくいつまでも元気で過ごすということは、万人の願いですが、自分でコントロールするという考えはあまりないように感じます。
美容整形やマッサージなどの手段で、手っ取り早くアンチエイジングしようとしている方が多いようです。
それらも悪くはないかもしれませんが、自分でアンチエイジングに取り組むということが重要であり、あきらめてはいけないことなのではないでしょうか?
若さ美しさは遺伝子が決める?
世界の美しい女優やモデルは、90対10の法則を理解しているといわれています。
この90対10の法則とはどのようなものなのでしょうか?
それは、年をとっても見事なスタイルを維持できるのは、遺伝子によるところはわずか10%で、残りの90%は生活習慣と、それが身体と遺伝子発現に与える影響で決まる、というものです。
美しい女優やモデルという方たちは、スタイル維持のために大金をはたいています。
その理由の一つが、この法則を実現するためなのだそうです。
一流のパーソナルトレーナーやお抱えのシェフ、栄養士を雇って、良い遺伝子のスイッチを入れて、体重管理や病気を引き起こす悪い遺伝子のスイッチを切るのです。
毎日オーガニックな養鶏場でとれた卵や、魚、緑黄色野菜などを食べ、おやつやワインなどは少しだけ、週に5回のジム通い、有酸素運動も欠かさない。
素晴らしいのは、遺伝子だけではなく、遺伝子をコントロールしようとする、彼女たちの努力にあります。
当然一般人の私たちは、大金を使うという真似はできませんが、その生活習慣をまねることは可能です。
DNA配列は、基本的に変化しないのですが、環境要因を変えることで、遺伝子にそれまでとは異なる振る舞いをさせることができる生活習慣を目指すことです。
遺伝子以外の要因を改善するためには、自分自身のDNAを知る必要はありません。
老化スピードを遅らせるのに有効な方法は、そのほとんどは誰にでも効果があるのだそうです。
人のDNAの約99,5%は同じで、残りの0,5%の差があるだけだから、というのがその理由です。
世界では長寿で特に有名な地域がいくつかありますが、そこに暮らす人々には共通する習慣があり、それを取り入れることで、アンチエイジングに良い遺伝子のスイッチを入れ、悪い遺伝子のスイッチを切ることができるのです。
その地域はバラバラですが、共通点があるということは、アンチエイジングの方法は、ほぼ誰にでも効果が期待できるということですね。
遺伝子のスイッチを入れるのは食事
誰もが納得されると思いますが、基本的な生活習慣の中でも、食生活は本当に重要です。
私たちの身体は食べたものからできているわけですから、遺伝子に正しくスイッチを入れるということも、食生活が大きく関係しています。
食生活を見直すことは、本当に重要なのですが、合わせて遺伝子に良い機能を十分に発揮させるためには、遺伝子に様々な機能があることを理解する必要があります。
専門的には、転写因子、メチル化、ヒスロン修飾やクロマチン再構成などです。
・転写因子
転写因子はタンパク質で、DNA配列に結合して、DNAからメッセンジャーRNAへの転写の割合を制御することにより、遺伝子のスイッチを切り替えます。
例えばサウナに入ると、熱ショック因子が放出されて、遺伝子の発現を増加させて、高熱に耐えられるようになるなどのことです。
・メチル化
メチル化は単純な生化学反応であり、多くの場合は、遺伝子のスイッチを切ることで、細胞に何をするべきか命令を出すことです。
このメチル化は、なんと体内のすべての細胞内で1秒間に10億回起きているそうです。
それだけに重要な要素であり、しっかりと制御する必要があります。
メチル化は具体的には、DNAやビタミンに対して下される、遺伝子や遺伝子の一部のスイッチを切りなさい、という指示で、メチル基と分子が結合して起こります。
メチル基とは、一つの炭素と水素原子で構成されたものです。
このメチル化は、スイッチを切るという重要な役割を担いますが、このメチル基が間違った指令を出すとどうなるかわかりますよね。
良い遺伝子のスイッチを切ってしまうことになるわけですから、しっかりと制御しないといけないわけです。
メチル化の役割の一つに、グルタチオンの生成を促すというものがあります。
グルタチオンは体内の最強の解毒剤であり、非常に役に立つ抗酸化物質です。
メチル化の機能が低下すると、解毒機能も当然低下してしまいます。
メチル化の機能が衰えているときの症状
疲れやすくて体力がない。
運動ができない。
太っていて、さらに体重の増加が抑えられない。
長期の筋肉痛などの痛みがある。
気分がすぐれない。
他にもたくさんの症状がありますが、メチル化の衰えによる症状は、おおよそ想像ができたのではないでしょうか。
・ヒストン修飾
染色体の中には、ヒストンと呼ばれるたんぱく質があります。それはDNAが巻き付く糸巻きのようなものであり、遺伝子のスイッチを入れることにかかわっています。
スイッチを入れることに関係するということで、良い遺伝子のスイッチを入れるために、活動してもらうようにコントロールする必要があります。
悪い遺伝子のスイッチを入れることも当然ありますから、制御はとても重要なことです。
例えば、老化によって脂肪が蓄積しやすくなり、非アルコール性脂肪肝疾患を引き起こすことがあるのですが、これはヒストンに関連があります。
糖の摂取によって脂肪を蓄える遺伝子のスイッチを入れてしまうからです。
・クロマチン再構成
クロマチンはDNAとタンパク質とRNAの複合体で、細胞内に存在して、遺伝子発現とDNAの複製を制御するひとつの方法になっています。
その他にも、遺伝子に関する作用は数えきれないほどありますが、この4つを知っていれば十分ではないかと思います。
また、これらの作用があるため、激しいストレスにさらされていて、身体に不調を感じていたり、若いころに不健康な生活を送っていたとしても、遺伝子のスイッチを切ったり入れたりすることで、アンチエイジングは可能になるのです。
エピジェネティクス
これを、エピジェネティクスと呼びます。このコンセプトは1942年にコンラッド・H・ウォディングトンにより初めて提唱されたものです。
環境要因などによって、遺伝子発現が変化することであり、子供に引き継がれることもあります。
遺伝がDNA塩基配列の変化によるものなのに対して、エピジェネティクスはDNA塩基配列の変化を伴いません。
このエピジェネティクスを、アンチエイジングに活かすことができれば、モデルのような体型も夢ではありません。
たとえあなたがいくつであったとしてもそれは可能なのです。
まとめ
エピジェネティクスを理解して、アンチエイジングに最適な生活習慣を送ることができれば、見た目の美しさはもちろんですが、健康寿命を延ばすことも可能になります。
健康寿命を延ばすことができれば、自分のやりたいこと、趣味などを年を重ねても積極的に取り組むことが可能になり、それがさらに若さを保つアンチエイジングとなるという、最高のスパイラル状態になるわけですね。