睡眠のメカニズムについて
睡眠のメカニズム
睡眠に関しては、睡眠時間の重要性は以前にお話ししましたが、合わせて睡眠の質も非常に重要になります。
十分に長い時間眠ったとしても、質が悪いといくら寝ても寝たりないような状態になってしまいます。
そうなると、やはり昼間のパフォーマンスが落ちたり、記憶力が悪くなったり、集中力がなくなったりして、悪影響を及ぼしてしまいます。
イライラしたりすることもあります。
そこで、睡眠の質を知るために、睡眠のメカニズムを知ることから始めましょう。
2つの睡眠
一口に睡眠といっても、レム睡眠(球速眼球運動睡眠)と、ノンレム睡眠(徐波睡眠)の2種類があります。
この睡眠の時には人は、夢を見ている状態です。
寝ている人が夢を見ているときには、目が動いています。
たまに薄目を空けて寝る人がいますよね。
もしもご家族に薄目を空けて寝る人がいる場合は、機会があれば起こさないように目を見てみると、目がかなり高速で動いていることがあるのがわかると思います。
くれぐれも起こさないように気を付けてくださいね。
- ノンレム睡眠
この睡眠は、俗にいう「ぐっすり眠っている状態」です。
脳の睡眠ともいわれることがあり、脳は覚醒していない状態です。目も動いていません。
さらにノンレム睡眠は、ステージ1(N1)からステージ4(N4)までの4段階に分けられ、N4が睡眠の最も深いレベルとなります。
このとき、周波数が 1Hz から 4Hz のデルタ波と呼ばれる低周波、高振幅の脳波が高頻度で観測されます。
通常、睡眠時間の50-60%はN1-N2睡眠が占めています。
N4が最も深い睡眠なのですが、N3とN4の違いはそれほどはっきりとしていないとも言われています。
したがってアンチエイジングなどの効果を考えると、ノンレム睡眠のステージ3以上の深い眠りを目指したいところです。
深い眠りの中で行われること
そのステージの睡眠では、心拍数が下がり、臓器、筋肉、骨が修復され、体力と精神力が強化され、免疫システムが整復されます。
逆に睡眠の質が浅いと、いくら寝ても寝たりないという状況になります。
それは、身体のメンテナンスがしっかりと行えていないために、睡眠不足を感じてしまうのです。
昨日は8時間以上寝たにも関わらず、昼間にあくびが止まらない、やる気が出ないという状況は、睡眠の深さが足りていないということが原因かもしれません。
アミロイドβ
また、ジョンホプキンス大学の研究によると、5時間未満の睡眠がアミロイドβを増加させるということが明らかになっています。
アミロイドβは臓器内で増える身体に悪い異常タンパク質で、組織の構造や機能を侵害して、脳にたまり、最終的には沈着して、記憶力と認知力が侵されます。
このアミロイドβは、アルツハイマー病の原因になるともいわれています。
そして、アミロイドβの蓄積がノンレム睡眠と記憶を阻害する可能性があるとも考えられています。
つまり、アミロイドβが脳に蓄積することで、睡眠が上手に取れなくなってしまう可能性があり、それがさらにアミロイドβを蓄積させるという悪循環に陥る可能性があるわけです。
その影響によってノンレム睡眠が乱れると、深い睡眠ステージにたどり着くことができませんので、当然睡眠の質も下がってしまうことになります。
睡眠不足と軽く見ていると、それ自体が睡眠の質を悪くしてしまうことも十分にあり得るということになります。
ですから、睡眠は質量ともにとても重要であるということが改めてわかると思います。
睡眠のリズム
睡眠のリズムは大きく分けて先ほどの2つあるのですが、レム睡眠で精神面を整えて、ノンレム睡眠で身体面を整えることができます。
ノンレム睡眠が脳を休める睡眠と言われ、ノンレム睡眠が身体を休息させる睡眠だと言われているからです。
どちらの睡眠も大切で、睡眠の導入、深さ、時間などのパターンを毎晩一定にするのが何よりも効果があります。
睡眠をそのような最適なものにするためには、いったい何が必要なのでしょうか?
それには、できる限り寝る時間と起きる時間を毎日同じにすることが重要です。
また良い睡眠をとるために、準備をするということも重要です。
睡眠サイクルの中では次のようなことが行われます。
- 成長ホルモンとメラトニンが増え、コルチゾールが減る(睡眠不足になると、午後と夕方のコルチゾールが増えて、血糖値が上昇し、老化と同じ現象が起きる)
- 夜間の睡眠でも昼寝でも、記憶が安定し、記憶力が向上する。
- ノンレム睡眠は宣言的記憶を向上させる。宣言的記憶とは、意識的に呼び覚まされるタイプの記憶で、言語や事実的知識など、言葉にできる記憶です。
- レム睡眠は精神面の再調整と、非宣言記憶(または手続き記憶)の形成に重要な役割を果たす。非宣言記憶とは、自転車の乗り方などの技術的な記憶です。
この睡眠サイクルからわかるとおり、睡眠中は成長ホルモンが分泌されます。
成長ホルモンというと、成長期だけにしか必要ないものと思われがちですが、実は誰にとっても成長ホルモンは大切なものです。
なぜなら、成長ホルモンは身体の修復に必要だからです。
睡眠は老化を防ぐためには欠かせないと言われるのは、眠っている間に成長ホルモンが身体の修復をしてくれるからというのが理由の一つです。
日ごろの生活でダメージを受けた組織が、睡眠中の成長ホルモンによって修復されることで、老化を遅くすることができるわけです。
睡眠のメカニズムを見てわかると思いますが、無駄なサイクルは一つもないですよね。
したがって2種類の睡眠の一方が不足しただけで、老化が進み、早死にのリスクが高まります。
睡眠は免疫系に関係あり
成長ホルモンなど、たくさんのホルモンは概日リズムに従って生成され、睡眠・覚醒サイクルは身体のリズムを整えています。
正しいホルモンバランスによって、夜にメラトニンと成長ホルモンが分泌されます。
メラトニンは免疫システムに関わる遺伝子など500以上の遺伝子を制御しています。
睡眠が不足すると免疫システムがうまく働かなくなるのは、これが原因の一つです。
これだけたくさんの遺伝子に関係しているのですから、当然免疫システムの遺伝子の制御も行っています。
ある実験では、1週間、被験者の睡眠時間を7時間以下に制限してから、風邪のウイルスにさらして、その結果を確認したそうです。
その結果、風邪を発症する確率が2倍になったというのです。
被験者の方も、よくこんな実験に参加したなと思いますが、やはり睡眠不足は免疫が落ちてしまうのですね。
風邪をひかない身体になるためには、まずは睡眠時間を確保することが重要ということに加えて、睡眠のリズムも整える必要があるということです。
睡眠の時間、リズムを整えてメラトニンの分泌量を整えるのは、将来に向けての手堅い投資の一つですね。
しかも、お金がかかる投資ではないですし、効果は明らかですからね。
絶対に損をしない投資は、睡眠以外にはないのかもしれませんよ。
やはり睡眠の確保は、全員が投資すべきところです。
まとめ
睡眠時間を削ると、成長ホルモンの分泌が減り、傷の修復が遅れ、腹部に脂肪がたまりやすくなります。
そして、睡眠時間を削ると睡眠の質も落ちてしまうことがあります。そうなるとホルモンバランスが総合的に崩れてしまうのは、今まで見てきたとおりです。
睡眠を質量ともに最高にすることを、今日から始める必要がありそうです。