運動を行うことでテロメアを最善に保ち、アンチエイジング!
運動とテロメア
アンチエイジングにとても重要な、細胞内のテロメアについてはご存知の方が多いでしょう。
細胞内の体内時計ともいえるテロメア (ゲノムを固定している染色体のキャップ)の研究では、適度な運動によってテロメアの長さが最善の状態に保たれるという結果が出ています。
さらに、 週に2~4時間の適度な運動、または高強度の運動によって、女性のテロメアの長さが適切に保たれますが、それ以上運動しても、テロメアの長さがさらに良好になることはないようです。
このデータが示していることは、適度な運動がもっとも効果的だということのようです。
では実際に、どのぐらい運動すればいいのでしょうか?
死亡率の研究では、週に1~2時間の中強度の運動がもっともよいとされており、テロメアの研究では週に2~4時間が最適とされています。
この結果から考えると、標準的な大人の1週間の運動量はテロメアの研究から2~4時間がよさそうです。
ただし、それはあくまで一般的な例ですので、人それぞれ個人差があり、運動をしたときの体調や気分の変化によって、調節することが重要になってきます。
また、強度が強い運動が健康に良くない、というわけでは必ずしもないため、激しい運動をやめなければならないというわけでもありません。
適度な運動とは?
どの程度の運動が良いのかはわかりましたが、それでは具体的にはどんな運動がいいのでしょうか?
どんな運動が適切なのかは人それぞれ異なるのは当然ですが、大切なのは有酸素運動と強度のバランスにあります。
テロメアの長さを測定した小規模な研究によれば、標準的な女性の場合、ヨガや健康体操、また、有酸素運動がもっとも体によいとされています。
現時点では、大規模な研究の報告はないのですが、早歩き、水泳、ピラティス、自転車漕ぎがお勧めの運動と言われています。
さらに機能性医学のほうを見てみると、万人に効く運動ではなく、個々人に適した運動を推奨しているようです。
ある人にとっては週に5日、3キロほどのジョギングが適していることもあれば、週4回の有酸素運動を取り入れたピラティ スのレッスンや、自然の中でのハイキングが効果的な人もいるということですね。
気分によって日々運動を変えるのが好きな人は、それでもかまわないようです。
骨密度との関係
閉経後の女性のウォーキングと骨密度の関係についても、よく質問があがるところです。
男性にくらべて女性は骨粗しょう症になりやすい傾向があります。
これはホルモンと骨密度の関係に理由があり、特に閉経後の女性はホルモンバランスが変わるために、骨粗鬆症には十分に気を付けなければならなりません。
ウォーキングと女性の骨密度の関係に関しては、歩くことで腰まわりの骨の一部が改善されるが、他の骨には効果がないという研究報告があります。
つまり歩くだけでは、身体全体の骨密度を十分に保つことは難しく、適正な骨密度を保つには、筋力トレーニングと早足のウォーキングを組み合わせるのが効果的です。
ある研究によると、コンバインド・トレーニング(筋トレを組み込んだ高強度の有酸素運動)をおこなっている女性は、腰まわりの骨と背骨の骨密度が大幅に改善されるという報告があります。
だから、負荷をかけたトレーニング(週に2、3回のダンベル体操、自重を利用したトレーニング、筋トレ用のマシントレーニングなど)や、ヨガを定期的におこなうことによって、骨密度を保つことができます。
ヨガの動作の中には筋力トレーニングの要素を含んだようなものがありますのでお勧めです。(ただし、閉経後の女性の骨密度に関して、ヨガが骨吸収速度を緩和するなど体によい効果があるという見解には異論もあるようです)。
このように、定期的に筋力トレーニングをおこなえば、骨密度が改善され、骨粗しょう症を引き起こすホルモンと代謝の変化をやわらげることができます。
運動はいくつになっても効果があるか?
ある実験で、70歳以上の人に半年間、週に2回の筋力トレーニングを実施させました。
実験にあたって、被験者は筋生検(筋肉の一部を切りとり、筋組織の状態を調べる検査)を受け、半年後にもまた同じ検査を受けたそうです。
この検査は、これを聞くだけでもかなり痛そうですね。
被験者がそこまでたいへんな思いをしての結果ですから、この結果に関しては厳粛に受け止めたいものです。
この研究の結果では、なんとトレーニング後の筋生検で、596の遺伝子が大幅に若返ったという結果が出ました。
対照群として同じ筋生検を受けた健康で活動的な二十代の若者と、ほぼ同レベルの結果というのです。
筋力トレーニングで筋肉量を増やせば、遺伝子が若返るのですから、当然代謝も上がり、その結果、脂肪の燃焼能力も向上することになります。
だからこそ、年を取れば取るほど筋力トレーニングは欠かせないものになるのですね。
なぜなら何もしなければ、遺伝子の老化を防ぐことはできないわけですから。
腹部の脂肪や内臓脂肪を燃やし、筋肉の効果を存分に発揮するために、さっそく今から運動を始めましょう。
また更年期に関する学術雑誌に掲載されたある研究もあります。
健康ですが肥満傾向にある閉経後の女性60人(平均年齢は55歳、平均体脂肪率は36%)を、週3回、各1時間のヨガをおこなうグループと、運動をしないグループ(対照群)に分けました。
そして6週間後、ヨガをおこなった女性たちの体にすばらしい変化が起こったのです。
- 体重が落ちた。体脂肪(特に、老化の原因となる内臓脂肪)が大幅に減り、(健康寿命を延ばす)除脂肪体重が増えた。
- ウエストが細くなった(女性の場合、腹囲8センチ以上がメタボリック症候群と診断される)。
- アディポネクチンが増えた(脂肪を燃やすホルモンで、ADIPOQ遺伝子に変異カがあると欠乏しやすい。
- コレステロールが改善された(善玉コレステロールが増え、総コレステロール、悪玉コ ステロール、中性脂肪が減った)。
- 血圧、インスリン、グルコース、インスリン抵抗性が下がった。
閉経後の女性も、運動の効果は素晴らしいものばかりです。
有酸素運動の効果
アンチエイジングをして、老化を防ぐためには、脂肪を燃やすことがとても重要なことはご理解いただいていると思います。
その脂肪を燃やすためのもうひとつの効果的な運動法は、毎日おこなう有酸素運動の強度を上げることです。
ただし、高強度の有酸素運動を長時間おこなうのではなく、断続的におこなうようにすると効果がさらに増すのです。
2008年におこなわれた実験では、27人の太った女性(平均年齢は51歳で、平均BMIは 34)に、高強度の有酸素運動を実施させたところ、胴まわりが細くなり、運動をしていない女性や軽度の有酸素運動をおこなった女性にくらべて、内臓脂肪が減ったそうです。
高強度の運動はmTOR遺伝子を調節し、成長ホルモンの分泌を促すので、内臓脂肪の減少につながると言われています。
そして、脳内のmTOR遺伝子は学習能力と記憶を向上させます。
学習能力や記憶力を向上させる理由は、他にもありますので参考にしてみてください。
さらに、心臓内のmTOR遺伝子は、心臓の筋肉を修復するので、その結果、安静時の心拍数が減り、なおかつ、拍動は大きくなり、効率的に心臓を動かすことができるようになります。
筋肉 (骨格筋と心臓筋)の収縮に関するmTORの影響は、性別や年齢に関係ないので、いつからはじめても遅すぎることはありません。
インターバルトレーニングやバースト・トレーニング(高強度で集中的なインターバルトレーニング)は、そればかりか長生き遺伝子を活性化させると言われています。
インターバルトレーニングや、バースト・トレーニングとはどのようなものかというと、2分間の早歩きと2分間のランニングを交互に20分間繰り返したり、1分間全力で自転車を漕ぎ、次の1分間はゆっくりと漕ぐということを30分間繰り返すようなトレーニングのことです。
これによって、筋肉の機械受容器(筋肉がどれほど激しく、素早く動いているかを感じ取る機関)に負荷がかかります。この負荷が、遺伝子を活性化させるとても重要な刺激になるのです。
アンチエイジングを効果的に行うためには、インターバルトレーニング、バーストトレーニングを、各人に合わせて取り入れていく必要がありますね。
まとめ
アンチエイジングを行うためには、運動は必須になります。
運動の効果は身体を若々しく保つだけでなく、脳も若々しく保ってくれる優れたものです。
重要なことは、自分に合った運動を探すことです。
自分が最もアンチエイジングできる運動を探してみてはいかがでしょうか?
ロールプレイングゲームのように楽しめるかもしれませんよ。